高齢者身体機能データベース
動作機能実計測データ
加齢に伴い身体機能は様々な変化を起こし、それにより生活上の不具合が出てきます。動作は日常生活の中心となる特性ですが、身体的な特性の低下だけでなく、様々な機器や装置の電子化、小型化、体位向上による基準寸法の変更等、高齢者を取り巻く環境も、高齢者にとってつらいものとなりつつあります。 以下に取り上げた項目は、いずれも高齢者の日常生活と密接に関連する項目であり、設備や機器等の操作部の設計、空間デザインへの応用をはじめ、いろいろな面で活用できる項目となっています。 なお、この結果は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託調査研究により得られたものであり、計測方法と共に、計測結果を紹介しています。
項目 | 内容・概要 | 計測方法と計測結果 | |
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作業しやすい高さ |
立位、座位で作業台上の押しボタン操作がしやすい高さの上限値、適正値、下限値を示しています 加齢とともに作業しやすい高さは低くなり、上限と下限高さの差が小さくなります 座位では、肘頭下縁高のあたりが操作しやすい高さとなっています |
計測方法 | 立位で作業しやすい高さ (H09 NEDO 20人) |
座位で作業しやすい高さ (H09 NEDO 20人) |
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計測方法 | 作業しやすい高さ (H10 NEDO 533人) |
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作業面上で手が届く範囲 |
立位、座位で作業面上で手が楽に届く範囲、少し努力したときなどに届く範囲を示しています 若年者と高齢者では「楽に」という動作で大きな違いがあり、高齢者は上体を曲げて手が届く位置を記録するのに対し、若年者は腕だけで楽に届く範囲を記録する傾向があります 楽な範囲とがんばったときの範囲を比べると、若年者は大きな差があるのに対して、高齢者はその範囲が狭くなっています |
計測方法 | 立位で手が届く範囲 (H09 NEDO 20人) |
座位で手が届く範囲 (H09 NEDO 20人) |
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計測方法 | 手が届く範囲 (H10 NEDO 533人) |
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前方、上方で手が届く範囲 |
立位、座位で前方や上方に手が楽に届く範囲、少し努力したときに届く範囲を示しています 若年者と高齢者では「楽に」という動作で大きな違いがあり、高齢者は上体を曲げて手が届く位置を記録するのに対し、若年者は腕だけで楽に届く範囲を記録する傾向があります 楽な範囲とがんばったときの範囲を比べると、若年者は大きな差があるのに対して、高齢者はその範囲が狭くなっています 図の中に設備の位置を書き入れると、操作できる位置かどうかがわかります |
計測方法 | 立位で手が届く範囲 (H09 NEDO 20人) |
座位で手が届く範囲 (H09 NEDO 20人) |
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計測方法 | 手が届く範囲 (H10 NEDO 533人) |
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調節操作のしやすさ |
立位、座位で押しボタン、ダイヤル、スライド式レバーにより調節操作をしたときの調節時間と評価を示しています 計測に使用した装置の中ではスライド式レバーの操作感が良くない結果となりました 年代が高くなるにつれて調節操作に要する時間が長くなります 押しボタン操作で軽くちょんちょんと押す操作ができない高齢被験者が見受けられました ダイヤルサイズは大きすぎても小さすぎても操作感がよくない結果となりました 操作部の持ち方にはいろいろなパターンが見られます |
計測方法 | 操作のしやすさ (H09 NEDO 20人) |
調節に要する時間 (H09 NEDO 20人) |
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ダイヤルサイズと操作のしやすさ (H09 NEDO 20人) |
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計測方法 | 操作のしやすさ (H10 NEDO 533人) |
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調節に要する時間 (H10 NEDO 533人) |
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ダイヤルサイズと操作のしやすさ (H10 NEDO 533人) |
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ダイヤルによる操作パターンと割合 (H10 NEDO 533人) |
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スライド式レバーによる操作パターンと割合 (H10 NEDO 533人) |
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押しボタンによる操作パターンと割合 (H10 NEDO 533人) |
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押しボタン操作のしやすさとミスの起こりやすさ |
立位、座位で大きさと間隔の異なる押しボタンを操作したときの押しやすさとミスの起こりやすさを示しています 年代が高くなるにつれて入力回数は少なくなっています ボタンサイズが小さかったり、ボタン同士の隙間が小さいときは押しにくいという評価となっています ボタンの取り付けピッチが狭いとき(H9)、ボタン同士の隙間が狭いとき(H10)、ミスをする人の割合が多くなっています |
計測方法 | 操作のしやすさ (H09 NEDO 20人) |
ミスの起こりやすさ (H09 NEDO 20人) |
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計測方法 | 年代と入力操作 (H10 NEDO 533人) |
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押しボタン装置と操作のしやすさ (H10 NEDO 533人) |
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押しボタン操作パターンと割合 (H10 NEDO 533人) |
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自由歩行 |
ものを持たない状態で平坦な通路を歩くときの歩幅、歩数、速度を示しています 個人差が非常に大きくなっていますが、高齢者の方が歩行速度は遅くなっています |
計測方法 | 自由歩行時の歩幅、歩数、速度 (H10 NEDO 20人) |
ものを持ったときと持たないときの歩行 |
いろいろな状態で平坦な通路を歩くときの歩幅、歩数、速度を示しています 慣れていないものを運ぶときなどは、その影響が見受けられます |
計測方法 | 持ちものの有無と歩幅、歩数、速度 (H10 NEDO 20人) |
持ち運びする重さ |
片手、両手で持ったときに軽く持てる重さ、少し重いと思う重さを示しています 3kgを超えるような場合には、両手でも持てるような配慮が望まれます |
計測方法 | 持ち運んだ重さ (H10 NEDO 20人) |
荷物の持ち方 (H10 NEDO 20人) |
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荷物を置く位置 (H10 NEDO 20人) |
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通路上に溝があるときの歩行 |
通路に溝があるとき、溝の幅によってどのように感じるかを示しています 自由歩行の歩幅の1/4以下であれば大きな問題はないようです |
計測方法 | 溝幅とまたぎ越しの感覚 (H10 NEDO 20人) |
通路上に障害物があるときの歩行 |
通路にまたぎ越しが必要な障害物があるとき、障害物の高さによってどのように感じるかを示しています 高さが5cmくらいから高齢者の歩行動作に変化が見られ、15cm高さの障害物に接触した高齢被験者がいました またぎ越しが必要な障害物は問題があることがわかります |
計測方法 | 障害物高さとまたぎ越しの感覚 (H10 NEDO 20人) |
障害物空間の歩行例 (H10 NEDO 20人) |
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明るさ変化があるときの歩行 |
明るい中を歩く、暗い中を歩くときの歩行について歩行速度の変化を示しています 足元が見えないくらい暗い中を歩くとき、暗がりに向かって歩くのは非常に困難で、前方に明かりがあると非常に歩きやすくなることがわかります |
計測方法 | 明るさと歩行速度 (H10 NEDO 20人) |
床に座っているときの姿勢 |
床に座っているときの姿勢や長時間座ったときの姿勢の変化を示しています 高齢者は若年者と比べて座っているときの姿勢変化が少なくなっています |
計測方法 | 床座姿勢のパターン分類 (H10 NEDO 20人) |
長時間座位を継続したときの姿勢変化 (H10 NEDO 20人) |
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周辺のものの位置と座位姿勢の関係 (H10 NEDO 20人) |
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床に座っているときの姿勢と立ち上がり動作 |
立ち上がる直前の床座姿勢と立ち上がるときにどの部位を支えにしたかを示しています 立ち上がるときにどこを支えるかについては、年代や性別により差が見られました |
計測方法 | 立ち上がる直前の姿勢 (H10 NEDO 20人) |
立つときに支える部位 (H10 NEDO 20人) |
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床に座るときの支え方と座った直後の姿勢 |
床に座るときにどの部位を支えにしたかと座った直後の床座姿勢を示しています 座るときにどこを支えるかについては、年代や性別により差が見られました |
計測方法 | 座った直後の姿勢 (H10 NEDO 20人) |
座るときに支える部位 (H10 NEDO 20人) |
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座りやすい高さと立ちやすい高さ |
背もたれがあるときとないときの椅子で、座りやすい高さ、立ちやすい高さ、安定して座れる高さを示しています 背もたれがあると座面が低くても安定して座れるという評価でした 座りやすく、立ち上やすく、座っていても安定している高さは、座位計測時の座面高さ近辺となりました |
計測方法 | いすの高さと負担感 (H10 NEDO 20人) |
深さのある隙間に対する感じ方 |
電車とプラットホームの隙間などについての感覚を示しています 注意し始めるようになる寸法は、想定する問題点によって異なるため、個人差が大きくなっていますが、平均的には高齢者の方が狭くなりました |
計測方法 | 越えるときに気にし始める隙間、 越えられるが越えたくない隙間の幅 (H10 NEDO 20人) |
一段段差の昇降に対する感じ方 |
一段の段差を上がったり降りたりするときの感じ方を示しています 高齢者の方が、高さに対する負担が大きくなっています |
計測方法 | 昇るとき、降りるときの負担感 (H10 NEDO 20人) |
ものを持ったときの力の入れ方 |
軽いもの、少し重いものを持ったときの握力を示しています 高齢者は最大握力に近い状態で握ることが多いようです |
計測方法 | ものを持つときの力 (H10 NEDO 20人) |
重心動揺 |
開眼、閉眼、前傾、後傾、左傾、右傾での重心の動揺を示しています 高齢者は全般に動揺が大きく、バランスがとりにくくなっています。特に閉眼や後傾時の動揺が大きくなっています |
計測方法 | 重心動揺 (H10 NEDO 20人) |
身体寸法と関節可動域 | 身体各部の寸法と関節の動く範囲を示しています | 身体寸法と関節可動域 (H10 NEDO 20人) |
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身体寸法と関節可動域 (H10 NEDO 533人) |
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日常生活の不具合点 | 視覚集団計測の際に実施した日常生活に関するアンケートの中から動作に関連した不具合点について概要を示しています | アンケート項目 | 動作に関連した日常生活の 不具合点(H09 HQL 420人) |