障害物高さとまたぎ越しの感覚


動作特性 −平成10年度 NEDO20人計測−


 

1.被験者数

  高齢者:12人(60代 3人、70代 5人、80代 4人)

  若年者: 8人(20代 4人、30代 4人)

  80代、20代、30代は男女各2人、60代、70代はいずれも男性が2人

 

2.計測内容

 片手荷物または両手荷物を持って高さの異なる障害物(またぎ越す幅90mm)をまたぎ越して歩き、歩行路端の台上に置いて戻る。その後、それぞれの障害物を越えたときの負担感について内観報告を聴取した。

 

3.計測結果

 

(1)障害物をまたぎ越すときの負担感に関する内観報告

 障害物をまたぎ越すときの負担感に関する内観報告の結果を図に示す。図の横軸は障害物の高さ、縦軸は各高さに対する負担感の程度を示す。

 障害物のある空間歩行は軽い片手荷物を置いてくる動作と軽い両手荷物を置いてくる動作の2回実施した。復路はいずれも手に荷物がない状態であるので、3つの場合の内観報告が比較できるようにした。

 また、この計測時に両手荷物を上方に掲げて足元が見えるようにした高齢被験者は、日常生活とは異なる動作であったので、集計からは除外した。

 

 

 

 この結果を見ると、両手荷物は障害物の高さに関わらず非常に負担を強いることがわかる。また、自由歩行では若年者は20mmと50mmとで負担感が大きく変わっているのに対して、高齢者では50mmと100mmとで大きく変わっている。また、100mmと150mmを比較すると、両手荷物の場合、若年者と比べ高齢者の負担感が急速に増えている。

 高齢者の場合、観察では高く大きく足をあげていると思われるのに、内観報告では負担は大きくないという回答がなされることが比較的多かったので、内観報告について年齢層の比較を行う際には注意を要する。

 

(2)障害物空間における課題動作と移動速度

 障害物設置空間として、障害物前後も含めて4m〜10mの区間の移動速度を算出した。結果を図に示す。前項と同様、両手荷物を上方に掲げた被験者は集計から除外した。高齢者の内65歳〜74歳は前期高齢者、75歳以上は後期高齢者と表示した。

 なお、この図の自由歩行は前項の負担感で表示した手に何も持たずに障害物空間を歩行する場合ではなく、平坦路における自由歩行である。

 

 

 図に見られるとおり、障害物空間ではかなり歩行速度が落ちるが、後期高齢者の場合、両手荷物での歩行速度低下が大きい。