高齢者身体機能データベース
体性感覚実計測データ
加齢に伴い身体機能は様々な変化を起こし、それにより生活上の不具合が出てきます。体性感覚は視覚や聴覚と異なり、身体の各部で感じることができる感覚で、触覚や痛覚、温熱感、運動感覚などがあります。これらの機能の中には加齢に伴って低下するものがありますが、一方、低下しにくいものもあるようです。
以下に取り上げた項目は、いずれも高齢者の日常生活と密接に関連する項目であり、設備や機器等の操作部の設計、空間デザインへの応用をはじめ、いろいろな面で活用できる項目となっています。
なお、この結果は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託調査研究により得られたものであり、計測方法と共に、計測結果を紹介しています。
項目 | 内容・概要 | 計測方法と計測結果 | |
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押しボタンの操作感と力の入れ方 | 座位で作業台上の押しボタンを操作したときの押しやすさと、その時に入れた力の大きさを示しています
高齢者は小さなクリックが分からないため、ボタンを強く押してしまうことが多いようです 高齢者の使用を想定すると、強度や耐久性への配慮が必要となります 動作計測結果もご参照ください |
計測方法 | 通常操作としっかり操作の比較 (H12 NEDO 20人) |
タイプの違うスイッチの押しやすさと押し力 (H12 NEDO 20人) | |||
ダイヤルやスライドレバー操作時に操作しやすい重さ | 座位でダイヤルやスライドレバー操作をする時に操作しやすい重さ(回転トルク)がどれくらいかを示しています
テストに用いたダイヤルでは若年者と高齢者ともほとんど同じ重さがよいという結果でしたが、スライドレバーでは高齢者の方が軽い装置を好む傾向がありました 軸を長くして回転操作を擬似的なスライド操作とするような装置の場合には、軸心に大きな力がかかる可能性があるため、強度面の検討が必要です 動作計測結果もご参照ください |
計測方法 | ダイヤル操作・スライド操作がしやすい重さ (H12 NEDO 20人) |
紙めくりのしやすさ | 座位で、数字を書いた紙をめくりながら卓上計算器で計算してもらい、そのときのめくりやすさを調べました
高齢者はめくるのに要する時間が長くなりますが、指が滑ってめくりにくかったり、数枚一度にめくってしまったり、指をなめたりする人がたくさん見受けられました 表面のざらつき具合や、紙の厚さによりめくりやすさが変わっています |
計測方法 | 紙めくり操作のしやすさ (H12 NEDO 20人) |
指先による凹凸記号の識別 | 座位で押しボタン装置の上面や、フィルム上面の凹凸記号が指先でどの程度識別できるか、その時にどれくらい力を入れて探しているかを示しています。
計測に使用した記号の中では凸点、凸バーがわかりやすく、斜め線のある△など複雑な形状は分かりにくいという結果となりました 高齢者だけでなく若年者の多くは、指先で記号を押さえながら識別しようとする傾向があり、軽い力でスイッチが入ってしまうような装置の場合には誤作動を起こす可能性が高くなります 複数の記号を識別するような場合には、スイッチ上面ではなく、周辺の固定部に表示するのがよいと思われます |
計測方法 | 凹凸記号のわかりやすさと識別時の力 (H12 NEDO 20人) |
ブラインド操作による操作位置の特定 | 座った状態で、机上面、前額面のマーク位置を、目で見ずに正確に指で押さえることができるかどうかの計測をしました
一旦マークを指で押さえて位置を確認した後、元の位置を押す操作をしたときに、どの程度ずれたかを示しています 年代による差というより、個人差の方が大きいという結果になりました 前額面(前面の壁)で、肩より下の方にあるマークでは、ずれ方が大きくなる傾向が見られます 肩より下の位置は目でも確認しにくいので、操作位置としてはあまり望ましくないと思われます |
計測方法 | 元の位置からのずれ方 (H12 NEDO 20人) |
振動の感じ方 | 着衣の上から振動を与えたときの振動の感じやすさを調べています前腕内側に自由に動く振動板を当てたときと、振動マッサージ椅子の振動の強さを変えたときの感じを調べました
前腕内側に自由に動く振動板を当てたときにわかりやすかった振動数は16〜64Hzという結果となりました 振動マッサージ椅子ではお知らせに使う場合、高齢男性は強めの振動が必要であるという結果となりました |
計測方法 | 振動の強さと感じ方 (H12 NEDO 20人) |
長時間着座と背もたれ角度 | 長時間着座するときの許容角度を調べています
長時間座ったときに安定した感じを持つことができる背もたれ角度を調べました リクライニングシートでは110°、寝椅子の場合は150°がよいという結果となりました |
計測方法 | 背もたれ角度と座りやすさ (H12 NEDO 20人) |
湿り具合の識別 | 水分含有率が約4〜5%ずつ異なるふきん10枚の湿り具合を識別した結果を示しています
高齢者と若年者の差はなく、水分含有率が増えてくると4〜5%程度の湿り具合の差は分かりにくくなります 水分含有率が10%を越えても乾いているという判断をする被験者はわずかでした |
計測方法 | 湿り具合の識別 (H12 NEDO 20人) |
床材の種類と滑り感 | フローリング、カーペット、Pタイル、畳を用いて歩行時の滑り感を調べた結果を示しています
滑り感は使用したソックスと床材の間の最大静止摩擦係数との関係が見られ、静止摩擦係数が小さい床材は滑りやすいという結果になりました 歩行路途中にまたぎ越しが必要な段差があると、足をあげてから下ろすというように歩き方が変わるため、滑り感が少なくなったという報告が、多くの被験者さんからありました 動作計測結果もご参照ください |
計測方法 | 床材の種類と滑り感 (H12 NEDO 20人) |
障害物またぎ越し時の足あげ高さ感 | 高齢者のアンケートでは、足をあげたつもりでもあがっていないという意見が多く出されています
歩行路途中にまたぎ越しが必要な障害物を置き、どれくらい足をあげているかを観察し、うまく越えられなかったときの状況を調査しました 高齢者は、若年者と比べて足あげ高さの平均値は変わらないが、ばらつきが大きくなるという結果になりました 高い障害物のまたぎ越しは高齢者にとって困難な動作であり、今回も高齢の被験者さんは9cmの段差でのテストを嫌がられました 動作計測結果もご参照ください |
計測方法 | 障害物またぎ越しの時の足あげ高さ (H12 NEDO 20人) |
身体寸法と関節可動域 | 身体各部の寸法と関節の動く範囲を示しています
動作計測結果もご参照ください |
身体寸法と関節可動域 (H12 NEDO 20人) | |
日常生活の不具合点 | 体性感覚に関するアンケート結果の概要を示しています | アンケート項目 | 体性感覚に関連した日常生活の不具合点 (H12 NEDO 20人) |