4.関節自動可動域及び関節受動抵抗計測
関節自動可動域とは、被験者が自ら運動を行った時に得られる関節の可動範囲のことである。
関節受動抵抗とは、被験者が脱力した状態で、計測者によって他動的に関節を可動させた時に、それに抗するように働く力をいう。また、そのときの関節可動域を関節受動可動域という。
■計測項目一覧
関節自動可動域
手関節 | 背屈(伸展)・掌屈(屈曲) |
橈屈・尺屈 | |
肘関節 | 伸展・屈曲 |
肩関節 | 伸展・屈曲 |
水平屈曲・水平伸展 | |
足関節 | 背屈(伸展)・底屈(屈曲) |
膝関節 | 屈曲 |
伸展 | |
股関節 | 屈曲 |
伸展 | |
内転 | |
外転 | |
頚部 | 後屈(伸展)・前屈(屈曲) |
左側屈・右側屈 | |
左右回旋 | |
体幹 | 後屈(伸展)・前屈(屈曲) |
左右回旋 |
関節受動抵抗
■適用範囲
この計測方法は、人体の肩関節・肘関節・手関節・股関節・膝関節・足関節・頚部・体幹部の矢状面及び前額面内の運動(体幹部は回旋も含む)に対する関節自動可動域及び関節受動抵抗計測方法について規定する。
■引用規格及び参照文献
この計測方法では、身体寸法計測において基準となる計測点及び関節点ならびに運動回転中心についてはJIS Z 8500(人間工学-人体寸法測定)を引用する。また、角度表示及び計測肢位、運動方向(屈曲、伸展)は、日本リハビリテーション医学会の「関節角度表示ならびに測定方法(平成7年4月改正)」を参照する。
■用語の定義
この計測方法で用いる主な用語の定義は、次のとおりとする。
a) 被験者:計測対象とする人。
b) 計測者:被験者の計測対象節に負荷をかける人。
c) 補助者:計測者の補助をする人。
d) オペレータ:関節受動抵抗計測器のデータ処理装置を操作する人。
e)関節受動抵抗:被験者の随意運動がなく、計測者によって受動的運動をさせた時、運動方向に抗するように働く力。
f) 関節角度:関節を挟む体節と体節のなす角度。
g) 関節自動可動域:被験者が随意運動を行った時に得られる関節運動範囲。
h) 基本姿勢:計測中に維持すべき被験者の姿勢。
i) 計測開始肢位:被験者の計測開始時の姿勢。
j) 荷重点:計測対象節に荷重を加える点。
■計測器
a) 計測台:被験者を乗せる台。
b) 桿状計 (アントロポメータ):関節点間及び関節点から荷重点までの距離を計測する計測器。
c) 身長計:身長を計測する計測器。
d) 体重計:身体重量を計測する計測器。
e) メジャー:周長を計測する計測器。
f) 足部計測器:足長を計測する計測器。
g) 計測点マーカー:計測点をマークするもの。アイランナーとクレンジングクリーム。
h) 直角定規:関節角度を確認するもの。
i) 基準側傾斜計:関節を構成する体節で固定側の体節に装着する90度傾斜計。
j) 可動側傾斜計:関節を構成する体節で可動側の体節に装着する360度傾斜計。
可動側傾斜計の装着については、関節自動可動域と関節受動抵抗の計測を一連で効率的に計測できるように工夫しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
k) 荷重計:荷重を計測する装置。
l) 関節受動抵抗計測器:矢状面及び前額面内の受動的運動において関節受動抵抗と関節角度を同期計測することができる装置
m) 体幹回旋角度計:体幹の回旋角を計測する角度計。
■装具
a) 手関節用固定板:指節の屈曲・伸展がないように固定する板。
b) 足関節用固定板:足部のアーチがないように固定する板。
c) 肘関節固定装具:肘関節を0度に固定する装具。
d) 頭置き台: 頭を置く台 。
e) 固定ベルト:大腿及び骨盤を固定するベルト。
f) 膝関節固定装具:膝関節を90度及び0度に固定する装具。
g) 前腕固定台:手関節測定時に前腕を固定する台。
h) 下腿固定台:足関節測定時に下腿を固定する台。
i) 大腿固定台: 膝関節測定時に大腿を固定する台。
j) 脚置き台:非計測対象の脚を乗せる台。
k) 上半身固定板:上半身を横に固定する板。
l) 傾斜計装着ベルト: 基準側傾斜計もしくは可動側傾斜計を装着するためのベルト。
m) 頭頚部傾斜計装着装具:頭頚部の計測時に可動傾斜計を装着するための装具。
n) 計測衣:動作に影響なく、被験者の関節中心が容易に触知できる服装