暗順応の計測
視覚機能
−H9 HQL420人計測−
1.目的
暗順応とは明所から暗所への順応を言う。
この計測では、真夏に白壁の照り返しを見た後、薄暗い屋内に入り、エレベータホールまで歩いて行き、行き先案内表示を読む場合を想定し、屋内に入った後、10秒間でどの程度のコントラストまで読みとれるようになるかの計測を行った。
2.計測条件
この計測では、順応速度に着目した計測を行うこととし、計測条件は日常生活を想定して設定した。
前順応のために、真夏の白壁の照り返しに相当する10000cd/m2のスクリーンを1分間見続けてもらった。
視標面の明るさは屋内の薄暗い場所を想定した10lxとし、照明装置には高演色性の蛍光灯を用い、反射光による計測とした。
明順応後の計測では前順応終了後10秒間の暗順応で読みとれるひらがなの黒色濃度を測定した。10秒間というのは屋内に入ってからエレベータホールまでの想定所要時間である。
明順応後の計測だけでなく前順応なしの条件も加えて、暗順応の計測条件を表のように設定した。
表 暗順応計測条件
視距離 前順応 視標面照度 視標(ひらがな)のコントラスト 矯正条件 3 m なし 10 lx 白背景−文字黒色濃度 100〜10% 生活視力(両眼) 3 m あり 10 lx 白背景−文字黒色濃度 100〜10% 生活視力(両眼)
3.計測装置
計測室と照明装置は3m視力計測装置と同一であり、生活視力の計測を参照されたい。
視標としては、黒色濃度を100〜10%まで10%刻みで変化させた10個のひらがな(視力0.15相当)を12時の位置から9時の位置まで時計回りに配置した視標を用いた。図に暗順応用視標(例)を示す。
図 暗順応用視標(例)
前順応装置およびプロジェクター制御シーケンスを下図に示す。
前順応装置はプロジェクターの位置を前後に動かし、スクリーン中央の輝度が10000cd/m2になるように事前調整しておき、実計測時には顎を顎台にのせ、スクリーン中央を見てもらいながら制御装置で照明時間調節を行う。
図 前順応装置概略構成図
(T1:5秒 T2:15秒 T3:60秒 T4:10秒
T5:3秒)
図 プロジェクター制御シーケンス
4.計測方法
(1)測定手順
・2分間の順応 → 暗順応時の読みとり濃度測定 → 1分間の明順応 → 明順応後の読みとり濃度の測定
(2)暗順応時の読みとり濃度の測定
・被験者の位置、使用矯正具を確認する。
・2分間の順応を兼ねて計測内容の説明を行う。(必ず順応時間を取る)
・視標を視標掲示パネルに取り付け、12時の位置にあるひらがなから時計回りに読んでもらう。(読めないときは照度を10lxずつあげていく。)
・読みとれたひらがなの最も薄い黒色濃度を記録する。
(3)明順応後の読みとり濃度の測定
・前順応装置を被験者の右斜め前方に移動させる。
・被験者が顎台に顎を乗せたことを確認して、前順応装置をスタートさせる。
・前順応の間に視標を取り替える。
・前順応終了後直ちに、被験者に正面の視標に視線を移してもらい、ひらがなを濃い方から声を出しながら読んでもらい、読みとれた最も薄いひらがなの黒色濃度を記録する。
・最も濃い文字が読みとれなかった場合、条件を変えて再度計測する旨の了解を取る。
・視標面照度を10lx上げ、前順応の間に視標を交換し、再計測する。(それでも読めないときは10lxずつ明るくしていく。)読みとれた文字の黒色濃度と視標面の照度を記録する。
(4)終了
・記録漏れがないことを確認して、被験者に終了を通知する。