NITE 平成13-14年度人間特性計測データ

5.上肢操作力計測

上肢操作力とは、ドアノブをひねったり、ドアを押し引きしたときの力をいう。

 

■計測項目一覧

 

■適用範囲

この計測方法は、人体の上肢の生活基本動作のうち片手で握る・片手でひねる・片手で引く・片手で押す・指で押す操作で生じる操作力の計測方法について規定する。

 

■引用規格及び参照文献

この計測方法では、身体寸法計測において基準となる計測点及び関節点ならびに運動回転中心についてはJIS Z 8500-1994(人間工学-人体寸法測定)を、運動方向(押す引く、ひねる)及び方向を決定するための面及び軸は基礎運動学を引用しその表し方は、JIS Z 8907-1987(方向性及び運動方向通則)による。

 

■用語の定義

この計測方法で用いる主な用語の定義は、次のとおりとする。

a) 被験者:計測対象とする人。

b) 計測者:被験者に計測対象操作を指示する人。

c) 補助者:計測者の補助をする人。

d) オペレータ:計測条件設定に必要な計測装置を操作・調整する人。

e) 操作力:被験者の随意運動により、運動方向に抗するように働く力。

f) 身体運動能力:予測不能の事態にも十分に対応できるエネルギーを残し、日常生活の課題を遂行する能力であり、ここでの対象は呼吸循環器系の働き、柔軟性、筋力、全身運動時の運動能力。

g) 待機姿勢:操作前に維持すべき被験者の姿勢をいう。

h) 運動方向の表示:視点が対象物の外部にある場合の外視式により表示する。

 

■計測機器

a) 桿状計(アントロポメータ):立位肘頭高を計測する計測器。

 

b) 操作力測定装置:操作する高さを任意に設定し、引く押す、指で押す、握る、ひねる操作で働く力を計測する装置。

 

c) 記録装置:トルク及び荷重測定装置で出力される電圧データを記録する装置。

 

■計測事前準備

1.計測高さの算出

計測した被験者の肘頭高に係数0.8~1.2を乗し算出する。

 

2.計測姿勢

1)立位

立位肘頭高を基点に操作力を計測する。

[姿勢]

・30cm離隔立位で、右側上肢90°

・30cm離隔立位で、上肢下垂し、肘頭高に各センサーの位置を合わせ基本高さとする

 

[注意事項]

肘頭高×(1.2~0.8)を事前に算出

 

2)座位

上肢屈曲130°で操作可能な最大高さでの操作力を計測する。

[姿勢]

・平坦な台に操作部を正面に座る・尻は浮かさない

・「操作可能な最大高さで操作力を計測します」

・角度定規で上肢屈曲130°に保持し指定操作を準備する

・操作部を保持した高さに移動

・「この高さで操作できますか?」(高さ調整)

・操作力計測

 

[使用機器]

平坦な台

 

3.高さの定義

1)立位

(1) 指で押す:操作ボタン頂点から床面

(2) ひねる:Z軸ひねりは円筒頂点から床面までx軸ひねりは円筒中心から床面まで

(3) 引く押す・握る:Y軸握りは円筒中心から床面Z軸握りは円筒握り中心から床面まで

 

2)座位

最大高さは上肢130°屈曲かつ操作可能な高さで、上記始点から座位肩峰高を引いた高さを算出する。

 

4.安全確保の留意点

(1) 計測中に力みすぎて無呼吸で操作を行う場合があるので、被験者には息を止めないように注意すること。

(2) 被験者の表情を見ながら、違和感・痛みを問いかけ、何時でも中断できること。

(3) 立っているだけでも負担になるので、被験者の状態を観ながら適宜休息を挟むこと。

 

5.計測条件の留意点

(1) 極力上肢のみで操作を行い、体重を計測装置にかけないように教示する。

(2) 操作条件が極端に変わらない限り、肩、腕及び肘関節の位置は自由とする。

(3) 計測時間は、1項目につき約6秒間計測する。

(4) 被験者および計測者ともに、操作に慣れてくるにつれて、スピードが上がる傾向にあるので、計測のテンポに注意すること。

 

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