サービス工学研究会
高性能・多機能の製品が必ずしも顧客に訴求する時代ではなくなりました。製品の価値が顧客の購買を決定する時代です。機能や性能が中心であれば、ものづくりメーカ主導で製品の企画や開発が進められます。これに対して、受け手の価値が中心になると、顧客がどのような製品を使って価値を感じるかが重要になって参ります。このために人間生活工学が、ものづくり企業でも取り入れられてきました。顧客の個性化、多様化が進み、単に年齢や性別だけで顧客をクラスタリングするだけでは、価値設計への競争力が得にくくなってきています。人間生活工学も次のステージに来ていると言えます。
このためには、顧客が製品を、実際にどのように使用し、どのような経験をし、どのように価値を感じているかを知る必要があります。これは、顧客との接点を通じてこれらの情報を定量的に取得して、ものづくりに再活用していく仕組みが、次の競争力に繋がります。このためには、今まで以上に顧客接点を重要視し、製品という「もの」を通じて、顧客の「体験」と「価値評価」の情報を得ていくことが必要になってくると考えます。
製品という「もの」を通じて、顧客情報を得るのに不可欠となるのが「サービス」です。ここでは、サービスの定義について明確化はしませんが、サービスには同時性(サービスの受容と提供が同時刻に働く)、消滅性(サービスを提供したときにしか効果はない)があると言われています。製品という「作られた時刻と使われる時刻が違う」「消滅しない」ものとは異なります。しかしながら、いまの時代では製品とサービスは一体として運用されるべきものだと思います。そして、より深く幅広い顧客接点を求め、顧客の「体験」と「価値評価」の情報を得て、ものづくりに活かしていくループをもつことがこれからの企業競争力の源泉であると考えます。
サービス工学研究会は、いままで勘と経験に頼ってきたサービスに科学と工学の視点を組み入れるための研究会です。科学と工学とは、定量的な観測と予測と言っても良いでしょう。どういうものを作ってどういうかたちで届ければ、顧客の「体験」と「価値評価」を産み出せるかを予測するのが究極の目標です。
サービス工学研究会では、
(1)先進的なサービス工学的研究事例の調査報告
(2)利用されている工学的手法に関する情報交換を行います。
(主査 (独)産業技術総合研究所 デジタルヒューマン工学研究センター 持丸 正明)
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