高齢者のIT利用特性データベース
IT機器の機能のイメージ
■IT機器が持つ機能および機能イメージに関する調査
■計測目的と計測内容
テクノロジー弱者である高齢者がIT機器を利用する際に感じる問題点を把握するため、2つのインタビュー調査を行った。1)IT機器および機器イメージに関する調査、2)IT機器が持つ機能および機能イメージに関する調査-である。
2)IT機器が持つ機能および機能イメージに関する調査- 各機器の基本的な機能をピックアップして、その機能を「使う」という観点からの問題点の抽出を行った。高齢者が危機を使用する際の問題点を具体的な操作と対応させて抽出することを目的とした。 対象機器は、6種類のIT機器(ATM、券売機、携帯電話、電子レンジ、電子辞書、DVDプレーヤー)とし、3種類ずつを組み合わせ、対象機器セット(Aセット:ATM、電子レンジ、電子辞書,Bセット:券売機、携帯電話、DVDプレーヤー)で実施した。 対象者は、すべての調査・実験に共通する対象者としてリクルーティングされた88名の中から、年代層別に28名を選出した。内訳は、高齢者層(60歳以上)12名(男性6名女性6名)、中高年層(50歳代)8名(男性4名女性4名)、若年層(20歳代)8名(男性4名女性4名)であった。
■計測手順
実際に機器を使用しながらインタビューを実施した。1名の対象者にインタビュアーと記録者が1名ずつ(計2名)で対応した。基本フローは以下の通りである。
1)ウオーミングアップ
時候の挨拶、インタビュアーの自己紹介などからインタビューをスタートさせ、家族構成、日常の様子、仕事、趣味、健康状態、地域との関わりなどを把握する。
2)セッション1
対象機器ごとに、あらかじめ決めておいた基本機能を一つずつカードで提示し、自宅や公共空間、職場などでそれらの機器を使用している場面を想定しながら、それらの機能を「使っているもの」と「使っていないもの」の2つのグループに分類する作業を行う。このとき「知らないもの」は「使っていないもの」に分類した。また、自分では操作できないが、普段使用しているものは「使っているもの」に分類した。
3)セッション2
「使う」というキーワードに関連して、「使える-使えない」と「使いたい-使いたくない」という2つの評価軸を設定し、「使っているもの」と「使っていないもの」に分類された機能カードを、それぞれの分類ごとに、この2つの評価軸を直交させた平面上にマッピングする。 このとき、「使える-使えない」の評価軸には、うまく使える度合いや使うことに関する自信の度合い、支障なく使える度合い、不自由なく使える度合いなどの意味を含ませた。 この作業を通じて、各機器は、「使っているもの」と「使っていないもの」の分類ごとに「使える-使えない」と「使いたい-使いたくない」の2軸を組み合わせた4つの象限に位置づけられた。
4)セッション3
マッピングされた機能カードの位置と実際の機器操作を対応させながら、機器や機能の使い勝手と使用上の問題点およびその理由について掘り下げていく。
5)データの記録
インタビューを通じて得られたコメントは、作業に用いたシートへの書き込みとカセットテープへの録音により記録し、その後、すべてのコメントをセンテンスごとに書き起こしたリストを作成した。
■計測結果
調査1と調査2で得られたコメントを対象機器別および対象機能別に整理したところ、設計項目の相当する変数として96の変数が得られた。それらを、階層構造を念頭に置いて結合・整理した結果、6つの領域と10のザブ領域、および3つの階層を持つ体系にまとめられた。
1.インターフェースに関する領域
・ガイドに関する領域 ・操作に関する領域
2.機能に関する領域
・ポジティブな領域 ・ネガティブな領域
3.機器属性に関する領域
・機器属性(ポジティブ) ・機器属性(ニュートラル) ・機器属性(ネガティブ)
4.社会的環境に関する領域
5.対人的環境に関する領域
・サポートに関する領域 ・デモンストレーションに関する領域 ・評価懸念に関する領域
6.個人的特性に関する領域