高齢者対応基盤整備データベース
10m自由歩行
■計測内容
高齢者になると、筋力・関節の衰えや視覚機能の低下により、歩行が困難になる。そこで、この計測では照度条件を変えて「自由歩行(通常の楽な速度)」と「速足歩行(急ぎ足)」の2種類の歩き方について速度を調べる。被験者が歩行速度の計測を行っていることを意識すると不自然な歩行になるので、自然な歩行を計測するために、履物を3種類用いて「歩きやすさの違いを調べる」という教示を与えて計測を行なった。
■計測機器
1) 歩行速度計測装置:(株)竹井機器製 歩行タイマー S-01046
2) 記録装置:(株)竹井機器製 歩行タイマー処理プログラム
3) 記録装置用PC:Logitec製 LCM-17FS3
4) 照明: |
・松下電工製 パルック蛍光灯 パルック色(EX-N)相関色温度5000K |
5) 照度計:ミノルタ製 デジタル照度計 T-1
6) 手すり:握り直径 28mm,床面からの高さ 770mm
7) 計測衣
衣服: |
原則として被験者が着用してきたものとするが、歩きにくい服装の場合のみ、運動着を着用してもらう。 |
履物: | ① 被験者自身の履き慣れた靴 ② 計測用運動靴:アシックス製 TSG600 5001 ③ 靴下 |
〔計測装置の概要〕
■計測条件
計測条件 | 計測項目 | ||
---|---|---|---|
照度 | 歩行速度 | 履物 | |
1 lx | 自由歩行 | 履き慣れた靴 | 1) 歩行速度の測定
2) 評価の聴取 ・「疲れ」に対する評価 ・「ふらつき」に対する評価 ・「休憩をとらずに続けて歩けるのは |
運動靴 | |||
靴下 | |||
速足歩行 | 履き慣れた靴 | ||
運動靴 | |||
靴下 | |||
1000 lx | 自由歩行 | 履き慣れた靴 | |
運動靴 | |||
靴下 | |||
速足歩行 | 履き慣れた靴 | ||
運動靴 | |||
靴下 | |||
歩幅の測定(1000 lx 履き慣れた靴での自由歩行において測定する) |
(歩行路:幅1m,全長12m, 床面:カーペット敷き,色=グレー)
■計測方法
測定手順
(1) 歩行路上1m区間ごとに赤外線センサを配置する。センサは歩行路から270mmの高さに設置する。(ほぼ膝下の部分が赤外線レーザーを遮るようにする)
(2) 照度計を路面中央の地上高750mmの位置に置き、照度調整を行う。
(3) 被験者ごとに、照度条件別( 1lx・1000lx ),歩行条件別(自由歩行,速足歩行)にランダムになるように予め計測順序を決める。
(4) 照度調整を行った後、被験者に入室してもらい、照度に対する順応時間として3分間待機してもらう。
(5) 3種類の履物で、それぞれ歩行速度を計測する。
(6) 3種類の履物各々について、「歩きやすさ」,「疲れ」,「ふらつき」,「休憩をとらずに続けて歩ける時間」の評価をしてもらう。
(7) 最後に再び10mの歩行路を歩いてもらい、5m付近から3歩間の距離を計り、歩幅を計算する。
被験者への教示
(1) この計測では明るい路面と暗い路面で「通常の楽な速度」と「急ぎ足」の2種類の速度で歩いていただき、歩きやすさ等について調べます。
(2) また、本日履いて来られたご自分の靴,計測用に用意した運動靴,靴下の3種類で履物を替えて歩いていただきます。(歩行速度を測っていることを意識させず、自然な歩行を計測するために、履物を3種類用いて歩きやすさの違いを調べるという教示とした。)
■計測結果
計測年:2001年度
計測人数:
年代 | 20~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70~79 | 80~ | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 8 | 9 | 10 | 10 | 30 | 22 | 11 | 100 |
女性 | 11 | 12 | 12 | 16 | 31 | 25 | 6 | 113 |
合計 | 19 | 21 | 22 | 26 | 61 | 47 | 17 | 213 |
結果のまとめ:
- 計測結果(1)より、自由歩行については、照度の違いに関わらず、男女共70代以上で速度が遅くなっている。速足歩行についても、照度の違いに関わらず、男女共70代以上で速度が遅くなっており、また、自由歩行に比べると若年者との歩行速度の差が大きくなっている。
- また、照度条件別の比較では、どの年代においても照度1lxでは1000lxの場合よりも歩行速度は遅くなっている。
- 計測結果(2)より、歩幅との対応を見ると、高齢者は歩幅が小さくなり、速度も遅くなることがわかる。
計測結果:
(1) 年代別歩行速度
【凡例】
-■-:1000lx
-○-:1lx
(2) 自由歩行における歩幅と歩行速度
■報告書PDF
2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-53,199-202,222