高齢者対応基盤整備データベース

警報音の聞こえ方

■計測内容

電化製品から流れる報知音の中でも、特に、安全性に関わる警報音(注意音)の音量がどのくらい必要になるのかを知る必要がある。さらに、日常生活や就労場面では、設備機器からの運転音・作業音や話し声や音楽などの背景音と同時に聴き取らなければならない。この計測では、背景音の中で実際にどのくらいの音の大きさならば聴き取れるのかを被験者自身に調整してもらい、刺激音の音圧レベルを決めた。

■計測機器

1) 刺激音提示装置

刺激音提示用
ノート型パソコン:
シャープ製 メビウス PC-MJ720R
アンプリファイアー: ローランド製 SRA-2500
スピーカー: 三菱製 DS-1000ZX

 

2) 背景音提示装置

DAT: ソニー製 DTC-A8
アンプリファイアー: ローランド製 SRA-5000
イコライザ: ローランド製 EQ-231
スピーカー: 三菱製 DS-1000ZX

 

■計測条件

1) 計測用音源

・刺激用音源

周波数: 500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz
波形: サイン波(純音)
提示パターン:

家電製品協会「家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン」に示されている注意音パターンを参考に設定。刺激音0.3秒を0.1秒間隔空けて提示する。

提示レベル: 55dBA

 

・背景音

ピンクノイズ: 55dBA、70dBA
ホワイトノイズ: 55dBA

 

※ピンクノイズ・ホワイトノイズとは

〔ピンクノイズ〕:広い周波数帯を含む音で3分の1オクターブバンドやオクターブバンドをとると周波数にかかわらず、バンド音圧レベルが一定となる雑音である。スペクトルレベルはオクターブ3dBの傾斜で高い周波数ほど低い。 したがってピンクノイズはホワイトノイズに比べて低周波成分が多く含まれている。

〔ホワイトノイズ〕:広い周波数を含む音で、すべての周波数帯において、一定周波数幅、例えば100Hzごとのレベル(スペクトルレベル)が一定の音である。 特徴として、ピンクノイズに比べて平坦なスペクトルを持つ雑音を言う。

 

2) 計測条件

計測条件を以下に示す。

背景音 × 刺激音周波数 × 条件
背景音なし 500Hz 「小さいが、注意すれば聞こえる大きさ/やっと聞こえる大きさ」
ピンクノイズ 55dBA 1000Hz
ホワイトノイズ 55dBA 2000Hz 「何かしていても、これだと鳴っていることに気がつく大きさ」
ピンクノイズ 70dBA 4000Hz

 

■計測方法

測定手順

(1) アンプ、DAT、ノート型パソコンの電源がONになっているかどうかを確認する。

(2) 被験者が計測室に入室する前に背景音のレベル調整を行う。

(3) 被験者に入室、着席してもらう。耳の位置がスピーカーから1.5mの距離で、身体の正面になるように椅子の位置を調整する。

(4) 被験者ごとにランダムに刺激音を提示するので、計測を始める前に提示する刺激音の順番を決めておく。

(5) 最初に、背景音のない状態で各刺激音を聞いてもらい、刺激音を確認してもらう。

(6) 背景音なし、ピンクノイズ55dBA、ホワイトノイズ55dBA、ピンクノイズ70dBAの4つの背景音条件をランダムに行う。各背景音条件の中で、500・1000・2000・4000Hzの刺激音をランダムに提示する。

(7) 被験者自身が、目の前にあるアンプのつまみを調整して、「小さいが、注意すれば聞こえる大きさ/やっと聞こえる大きさ」に音量を決める。音量調整器の目盛りを記録する。続いて「何かしていても、これだと鳴っていることに気がつく大きさ」も同様に被験者自身が音量調整器で決定する。

(8) 背景音がピンクノイズ70dBAの時には、背景音を誤って刺激音と勘違いする場合があるので、背景を提示する前に必ず各刺激音を1度ならしてどのような刺激音が提示されるのかを確認してもらう。

 

 

被験者への教示

(1) 電化製品では操作ミスや誤作動があったときに注意を促すために音が鳴ります。

(2) そのような音を聴き取る時には、静かな環境で自然にその音に意識が向く場合だけでなく、背景に空調音や人の声などの様々な雑音の中で聴き取らなければならない状況が多くあります。

(3) この計測では、そのような背景音でどのくらいの大きさの音ならば聴き取ることができるのかを知るために行う計測です。

(4) スピーカーから提示される音をまず「小さいが、注意すれば聞こえる大きさ/やっと聞こえる大きさ」に目の前の音量調整器を調整して音量を決めてください。

(5) 次に、「何かしていても、これだと鳴っていることに気がつく大きさ」に先ほどと同じように音量を決めてください。この大きさはテレビを見ているときや台所で炊事をしているときなど、何かに集中している様子をイメージして、その場合でも聴き取れる大きさに音量調整器を調整してください。

 

■計測結果

計測年:2001年度

計測人数:

年齢別

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
人数 21 21 20 28 65 54 16 225

 

聴力レベル(4分法)別

聴力レベル -10~0 1~10 11~20 21~30 31~40 41~ 合計
人数 7 94 86 27 8 3 225

 

結果のまとめ:

  • 計測結果(1)より、500Hz、1000Hzの刺激音周波数では、どの年代でも「背景音なし」→「ホワイトノイズ55dBA」→「ピンクノイズ55dBA」→「ピンクノイズ70dBA」の順に騒音のマスキング効果により聴き取りにくくなり、設定レベルが大きくなる。
  • また、刺激音周波数2000Hzでは、ピンクノイズ55dBA、ホワイトノイズ55dBAが同程度になり、どちらも同様に聴き取りにくく、刺激音周波数4000Hzでは逆にホワイトノイズ55dBAが大きくなっている。この理由として、刺激音周波数における背景音の臨界帯域内レベルの大小があげられる。ちなみに、理論上のピンクノイズ55dBAの500、1000、2000、4000Hzのオクターブバンドレベルは49,49,49,49dBと一定であり、ホワイトノイズ55dBAのそれらは42,45,48,51dBで4000Hzの時に逆転している。
  • さらに、2000Hz、4000Hzの刺激音周波数では、背景音なし、ピンクノイズ55dBA、ホワイトノイズ55dBAでは若干右上がりのグラフになっている。つまり、加齢と共に刺激音を大きな音で提示しなければ聴き取れないということがわかる。
  • 計測結果(2)より、純音聴力レベル(4分法)別では難聴に属す41dB以上の群では他の群に比べて聞き取れる音量が大きくなっている。
  • 計測結果(1),(2)より、「小さいが、注意すれば聞こえる大きさ」と「何かしていても聞こえる大きさ」には刺激音の周波数、背景音の種類、レベル、年代(聴力レベル)を問わずおおよそ6dB程度の差が見られる。

 

計測結果:

(1) 年代別平均:刺激音周波数ごとに聴き取れる音量

・刺激音周波数 500Hz

 

・刺激音周波数 1000Hz

 

・刺激音周波数 2000Hz

 

刺激音周波数 4000Hz

凡例:

 

(2) 聴力レベル別平均:刺激音周波数ごとに聴き取れる音量

・刺激音周波数 500Hz

 

・刺激音周波数 1000Hz

 

・刺激音周波数 2000Hz

 

・刺激音周波数 4000Hz

凡例:

 

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