高齢者対応基盤整備データベース

発光表示による3m生活視力

■計測内容

近年のめまぐるしい技術進歩の中で、LEDや液晶画面のような発光表示を日常生活で眼にする機械が増えています。たとえば、ファーストフードのメニューにまで液晶画面の投入が考案されるなど、より日常生活の深いところに発光表示が入り込んできているため、これまでのように、部屋の中で液晶画面を見るという場面だけでなく、様々な環境の明るさの中で発光表示を見る機械が多くなってきています。そこで、この計測では発光体画面の明るさと環境照度を変化させて、比較的遠くを見る場面を想定し、発光表示に対して視距離3mの生活視力を計測する。

■計測機器

1)擬似モニタ

擬似モニターの詳細な図

・㈱千傳社製・擬似モニターのサイズは19インチに相当する。

・600mm（D）×570mm（W）×340mm（H）の木製。

・上部は蓋になっていて、NDフィルター交換や蛍光灯の交換のため取り外し可能。鉄製。

・調光器で蛍光灯の光を調節する。蛍光灯から発する光を拡散させるNDフィルターを　使用。NDフィルターとは車の窓ガラスに遮光用に使用するもので、NDはneutraldensityの略である。

2)透過フィルム（反射表示用フィルムも同様）

・視距離3m生活視力計測用ランドルト環をオフセット印刷により作成し、視標に使用。

・ランドルト環の切れ目は上下左右の4方向、計測可能な視力は0.1～3.0。

・切れ目は外径に対して1/5になるように設定している

3)輝度計
	・ミノルタ製　色彩輝度計　CS-100A

4)照度計
	・ミノルタ製　デジタル照度計　T-1

■ 計測条件

計測条件を以下に示す。視距離は3mとする。

視表面照度	矯正条件	視標濃度
1000lx	生活視力(両眼）	15%
		35%
		55%
		100%
	生活視力（右眼）	100%
	生活視力（左眼）	100%
	裸眼視力（両眼）	100%
	裸眼視力（右眼）	100%
	裸眼視力（左眼）	100%
100lx	生活視力（両眼）	15%
		35%
		55%
		100%
10lx	生活視力（両眼）	15%
		35%
		55%
		100%

■計測方法

測定手順

(1) 記録用紙、3m生活視力視標、正解表、順応時間計測用ストップウォッチを用意する。

(2) 環境照度を条件に合わせて調節する。（環境照度の条件はランダムに設定する）

(3) 椅子を擬似モニターから被験者の視距離が3mになる位置に配置し、被験者に入室着席してもらう。

(4) 環境照度はランダムに設定する。

(5) 環境照度を変化させたときには、2分間の順応時間を取り、画面輝度条件を変化させたときには30秒間の順応時間をとる。

(6) 環境照度の条件（1000lx、300lx、10lx）をランダムに設定する。

(7) 設定された環境照度の条件の中で、画面輝度は反射光表示（不透明フィルム）→10cd/㎡→30cd/㎡→100cd/㎡→500cd/㎡の順序で計測する。

(8) あらかじめ環境照度条件はランダムに提示する順番を決めておく。環境照度を一番目の条件にあわせる。

(9) 2分間の順応を兼ねて、計測の説明や教示を行う。

(10) 反射光表示（不透明フィルム）の視標を提示し、一番上の視標からランドルト環の切れ目を読んでもらう。

(11) 判定方法（他の条件においても同様）

視力0.1のランドルト環を一つ示す。
被験者の回答が正しければ一つ小さいサイズに移る。
回答を間違えるまで繰り返す。
読めない、あるいは間違えた場合は同視力レベルのランドルト環を読んでもらう。

(12) 画面輝度を10cd/㎡に調整する。

(13) 30秒間の順応時間を取った後に、生活視力を上記の手順に沿って測定する。

(14) 以後画面輝度を30cd/㎡→100cd/㎡→500cd/㎡の順に計測する。

(15) 残りの環境照度条件でも同様の手順とする。

被験者への教示

(1) 昼間見えている対象が、夕方には見えなくなるという感じ方は誰にでもあります。この計測では周りの明るさや見るもの自体の明るさを変えたときにどのように見え方が変わるのかを計測します。

(2) この計測では、テレビ画面を想定し、その画面上に見ていただく視標を貼りつけています。部屋の明るさをいくつか変えた状態と、画面の明るさをいくつか変えた状態で計測を行います。

(3) この計測は、眼科の視力検査と異なります。普段の生活でどの程度ものが見えているかを調べることが目的ですから、眼を細めたり、力を入れて見たりしないように普段通りの見方でお願いします。

■計測結果

計測年： 2001年

計測人数：

20代	30代	40代	50代	60代	70代	80代	合計
21	20	19	29	66	53	17	225

結果のまとめ：

加齢と共に、より大きいサイズのランドルト環が必要である。
画面輝度が暗いと大きなサイズのランドルト環が必要である。（各年代、環境照度3条件のすべての場合において）
すべての環境照度において、70代以降では読み取ることができるランドルト環の外径が大きくなっている。
環境照度10lx、300lx、1000lxを比較すると、明るくなるにつれて10cd/㎡と30cd/㎡の間が大きくなっていることがわかる。つまり、擬似モニターに提示された10cd/㎡の視標が徐々に見えにくくなっている。
画面輝度500cd/㎡では環境照度10lxと1000lxで読み取ることができるランドルト環の外径はほとんど同じ大きさである。
画面輝度10cd/㎡では環境照度が明るい方が視標は読み取りにくくなっていることがわかる。
どちらの照度においても画面輝度500cd/㎡に比べて画面輝度10cd/㎡では読み取ることができるランドルト環の外径が大きくなる。
20代を基準にすると70代以降の視力の低下が顕著であることがわかる。その傾向は画面輝度10cd/㎡の方が画面輝度500cd/㎡に比べて大きくなっている。

計測結果：

(1)　環境照度ごとの年代別平均値

(2)　環境照度が最も明るいとき・暗いとき／画面輝度が最も明るいとき・暗いときの組み合わせ

■報告書PDF

2001年度　高齢者対応基盤整備研究開発　第2編データベース整備（動態・視聴覚特性）より抜粋p247-360