高齢者対応基盤整備データベース

台車を押す動作

■計測内容

生産場面では荷物の運搬等に台車が使われることが多く、日常生活においても買物カートを押す場合がよくあるが、台車を使用する場合、取っ手の持ちやすさが負担感に影響を与えていると思われる。そこで、この計測では実際に被験者に台車を押してもらい、押しやすい取っ手の太さと押しやすい取っ手の高さを調べた。

 

■計測機器

1)作業用台車

東京ストッカーシステム製
・型番:NTB-102 荷台寸法:480mm (W)×740mm(D)
・床面高:140mm
・車輪直径:100mm
・重量:17.5kg程度(おもりの重量を含む)
・取っ手:直径φ20mm,φ25mm,φ30mm,φ35mm,φ40mm,φ45mm
     高さ可動域(床面からの高さ) 350mm~1500mm

※台車が動き始める時に必要な力の大きさは2.5kgf,動き出してから必要な力の大きさは1.5kgf程度である。

2) おもり
重さ:10kg
キャリボックスにおもりを入れたもの

 

■計測条件

・屋外や公共の場所を想定しているため、靴を履いた状態で計測を行う。

・計測条件および計測項目を以下に示す。

計測条件 計測項目 
押しやすい取っ手の太さ 取っ手の太さ20,25,30,35,40,45mmの台車を実際に押して、 最も押しやすい太さを選択
取っ手の高さ ・これ以上高くなると押しにくくなる高さ
・最も押しやすい高さ
・これ以上低くなると押しにくくなる高さ

 

■計測方法

測定手順

(1) 取っ手の太さ20,25,30,35,40,45mmの6台の台車の取っ手の高さを、全て被験者の上前腸骨棘高に設定する。

(2) 台車に10kgのおもりを載せる。

(3) 6台の台車を1台ずつ押してもらい、最も押しやすい太さの台車を決めてもらう。

(4) 最も押しやすい取っ手の太さが決まったら、次に取っ手の高さについて調べる。最も押しやすい高さを正しく求めるために、以下の順序で計測を行う。

① これ以上低くなると押しにくくなる高さ
② これ以上高くなると押しにくくなる高さ
③ 最も押しやすい高さ

※なお、床から握りの中心までの高さを取っ手の高さとして測定した。(下図参照)

 

被験者への教示 

・台車を押す場面を考えた時に、取っ手について握りやすい太さと高さがあると思います。この計測では、台車を実際に押していただいて、それらについて調べます。

 

■計測結果

計測年:2001年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 6 9 9 11 29 23 10 97
女性 10 11 11 13 32 23 6 106
合計 16 20 20 24 61 46 16 203

 

結果のまとめ:

  • 計測結果(1)より、押しやすい取っ手の太さについては、男女共、直径30mm,35mmの太さを選んだ者が多い。
  • 計測結果(2)より、「最も押しやすい取っ手の高さ」,「これ以上高くなると押しにくくなる高さ」は、男女とも加齢に伴って低くなるが、「これ以上低くなると押しにくくなる高さ」については、年代による違いがほとんどない。
  • 計測結果(3)より、肘頭下縁高との比率から見ると、「最も押しやすい高さ」は、どの年代でも肘頭下縁高の90%程度の高さとなっているが、「これ以上低くなると押しにくくなる高さ」については、高齢者になるとやや高い位置になる。
  • 計測結果(4)より、上前腸骨棘高との比率から見ても、「最も押しやすい高さ」はどの年代でもほぼ上前腸骨棘高と一致している。「これ以上低くなると押しにくくなる高さ」については肘頭下縁高との比率と同様に、高齢者になると若干高い位置になる傾向がある。
  • 計測結果(2)~(4)より、高齢者になると押しやすい高さの許容幅は若年者に比べて狭くなっていることがわかる

※肘頭下縁高とは:

 

※上前腸骨棘高とは:

 

計測結果:

(1) 押しやすい取っ手の太さ:年代別平均値

 

(2) 取っ手の高さ:条件別比較

【凡例】
-□-:これ以上高くなると押しにくくなる高さ
-○-:最も押しやすい高さ
-△-:これ以上低くなると押しにくくなる高さ

 

(3) 取っ手の高さ/肘頭下縁高:条件別比較

【凡例】
-□-:これ以上高くなると押しにくくなる高さ
-○-:最も押しやすい高さ
-△-:これ以上低くなると押しにくくなる高さ

 

(4) 取っ手の高さ/上前腸骨棘高:条件別比較

【凡例】
-□-:これ以上高くなると押しにくくなる高さ
-○-:最も押しやすい高さ
-△-:これ以上低くなると押しにくくなる高さ

 

 

■報告書PDF

2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-34,165-174,214-217,222-229

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