高齢者対応基盤整備データベース
単純段差・またぎ段差の比較
■計測内容
バリアフリー化が進む中、住宅・施設の中に段差は作らないことが望ましいとされているが、実際には水や埃の侵入を防ぐ目的や建設上の条件等の諸事情により、玄関の上りかまちや浴室の入口に単純段差やまたぎ段差が設けられる場合が多い。『長寿社会対応住宅設計マニュアル』では、住宅内の段差に関する基準が設けられており、やむを得ず段差を設ける場合には、またぎ段差よりも単純段差の方が望ましいとされている。しかし、一部には、高さによっては段差の種類による違いが感じられない場合や、あるいはまたぎ段差の方が負担が少ない場合もあるのではないかという意見もある。そこで、この計測では、同じ高さの単純段差とまたぎ段差を用意し、単純段差を上る動作,降りる動作,またぎ段差を比較してもらい、どの動作が最も負担を感じない移動動作であるかを調べた。
■計測機器
1) 単純段差(木製):1000mm(W)×2000mm(D)×90mm(H),180mm(H)
2) またぎ段差(木製):900mm(W)×90mm(D)×90mm(H),180mm(H)
■計測条件
・室内の段差を想定し、靴を履かずに靴下を履いた状態で計測を行う。
・計測条件および計測項目を以下に示す。
計測条件 | 計測項目 | |
---|---|---|
段差の種類 | 段差の高さ | |
単純段差 | 90mm | (評価) 1:負担はない 2:やや負担を感じる 3:かなり負担を感じる 4:非常に負担を感じる |
180mm | ||
またぎ段差 | 90mm | |
180mm | ||
・単純段差(上る動作) ・単純段差(降りる動作) ・またぎ段差 |
高さ90mm,180mmそれぞれの場合で、3つの動作を比較し、順位をつける |
■計測方法
測定手順
(1) 90mmと180㎜の単純段差とをまたぎ段差を設置する。
(2) 90mmの単純段差とまたぎ段差をまたいでもらい、負担感について評価を聴取する。
1:負担はない
2:やや負担を感じる
3:かなり負担を感じる
4:非常に負担を感じる
(3) 同様に180mmの単純段差とまたぎ段差について計測する。
(4) 90mmの単純段差とまたぎ段差をまたいでもらい、下記の3つの動作の負担感について順位をつけてもらう。
①単純段差を上る動作
②単純段差を降りる動作
③またぎ段差をまたぐ動作
(5) 同様に180mmの単純段差とまたぎ段差について計測する。
被験者への教示
・この計測では、2種類の段差をまたいでいただき、負担感について調べます。
■計測結果
計測年:2001年度
計測人数:
年代 | 20~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70~79 | 80~ | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 6 | 9 | 9 | 11 | 29 | 24 | 10 | 98 |
女性 | 10 | 11 | 12 | 15 | 32 | 23 | 6 | 109 |
合計 | 16 | 20 | 21 | 26 | 61 | 47 | 16 | 207 |
結果のまとめ:
- 計測結果(1)より、最も負担を感じない動作としては、90mm,180mmの両方で単純段差を上る動作を選択している者が多いが、20代では単純段差を降りる動作を最も楽だと感じる者が多い。
- また、単純段差とまたぎ段差では、単純段差の方が負担を感じないという結果になったが、 加齢とともに降りる動作に負担を感じる者が増えていることがわかる。男女とも、全体的には上る動作の方が負担が少ないと感じる者が多いようである。
- 計測結果(2)より、負担感については、同じ種類の段差であれば高い段差の方が負担感が大きいが、加齢による変化はほとんど見られなかった。
- また、90mmでは単純段差とまたぎ段差の負担感の差はほとんどないが、180mmの高さになると、またぎ段差の方に大きく負担を感じるようになる。
- 計測時の感想からは、またぎ段差は足を引っかけてしまうのではないかという不安感から、負担を感じる者が多く、また、高齢者は膝の痛み等から降りる動作に負担を感じる場合が多いようであった。
計測結果:
(1) 動作別 負担感の順位
【凡例】
-◆-:単純段差(上り)
-○-:単純段差(降り)
-△-:またぎ段差
(2) 段差の種類別 負担感の比較
【凡例】
【縦軸:評価】
1:負担はない
2:やや負担を感じる
3:かなり負担を感じる
4:非常に負担を感じる
■報告書PDF
2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-34,124-132