高齢者対応基盤整備データベース
指先でものに触る動作
■計測内容
指先の感覚でものの位置を確認して操作をしたり、ものに触れてその触覚で素材の確認をしたりするという行為は日常的なものである。また、パソコンのキーボードや電卓等の機器を操作する場合には、指を置く基準となるキーに突起が付いており、操作しやすくなっている。このように指先の感覚は手の動作と強く関係している。しかし、指先の感覚には個人差や年齢による違いがあると思われるので、この計測では物に触れて違いがわかるかどうかということを調べた。なお、基本特性として、指先の触覚が加齢とともに変化するのかどうかを同時に調べた。
■計測機器
1) キーボード:プラスチック製,キー中央下部分に線状の突起のあるもの。
2) 紙ヤスリ:粒度(目の粗さ)180,240,320,400 の4種類
■計測条件
・計測条件および計測項目を以下に示す。
計測条件 | 計測項目 |
---|---|
キーボードを使用する計測 | ・どのような突起であるか説明せずに、突起のあるキーを選んでもらう。 ・次に、実際に突起のあるキーがどんな形かを提示して確認してもらい、もう一度同様に選んでもらう。 |
紙ヤスリを使用する計測 | ・4種類の紙ヤスリの中から1種類を提示し、手元を見ずに4枚の中から同じ種類を選んでもらう。 |
■計測方法
測定手順
〔キーボードを使った計測〕
(1) キーボードのキーの配置は被験者ごとにランダムになるように決める。
(2)パソコンのキーボードにキーを10個配置する。その中に1つだけ突起のあるキーを置き、手元を隠した状態で、突起のあるキーを探してもらう。
(3)次に、実際に突起のあるキーがどんな形であるかを被験者に提示し、確認してもらう。その後、もう一度手元を隠した状態で、突起のあるキーを探してもらう。
〔紙ヤスリを使った計測〕
(1)紙ヤスリの配置は被験者ごとにランダムになるように予め決めておく。
(2)提示した1種類の紙ヤスリの表面を、手元を隠した状態で触ってもらい、4種類の紙ヤスリの中から提示したものと同じ種類のものを探してもらう。
(3) 提示する紙ヤスリは乱数表により決め、被験者1人につき4回の計測を行う。
被験者への教示
(1)日常生活では、手でものに触って判断して行動に移すということがあると思います。(例えば、パソコンのキーボードや電卓には指を置く基準となるキーに印がついていて、探しやすいようになっています。)この計測では、そういった指先の感覚を調べたいと思います。
(2)また、ものを触って違いを感じるかどうかということには個人差があると思われます。この実験では、表面の粗さの違う紙を触っていただいて、その違いがわかるかどうかを調べます。
(3) いずれも手元が見えない状態で計測を行いますが、よろしいでしょうか。
■計測結果
計測年:2001年度
計測人数:
年代 | 20~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70~79 | 80~ | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 5 | 8 | 7 | 10 | 22 | 17 | 3 | 72 |
女性 | 7 | 10 | 9 | 11 | 24 | 14 | 4 | 79 |
合計 | 12 | 18 | 16 | 21 | 46 | 31 | 7 | 151 |
結果のまとめ:
- 計測結果(1)より、キーボードの正答率は男女共に若年者の方が高い。突起を提示する前では、70代以上の高齢者男性の正答率が低く、特に80代での正答は皆無となる。提示された突起の形を確認した後では、全年代において正答率は高くなるものの、80代男性の場合は40%以下の正答率に留まった。
- 計測結果(2)より、紙ヤスリを用いた計測では、男性には加齢変化が見られなかったが、女性は若年者の方が正答率は高いという結果になった。
計測結果:
(1) キーボードを使った計測 (正答率)
(2) 紙ヤスリを使った計測 (正答率)
■報告書PDF
2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-34,191-196