高齢者対応基盤整備データベース
ちょうど良い手すりの高さ
■計測内容
高齢者になると、歩行の際に手すりを使用する頻度が多くなると考えられる。現在、『長寿社会対応住宅設計マニュアル』では750mmの手すりの高さが推奨されている。しかし性別や年齢による体格の違い等を考えると、750mmの高さが全ての人にとってちょうど良い高さとは限らない。そこで、この計測では公共施設や住宅内に手すりを設置する際に、持ちやすい高さがどれぐらいかということを知るために、手すりの高さを変えて、ちょうど良い高さを被験者に判断してもらう。
■計測機器
・手すり:
2本のステンレス製のポールに水平にパイプを固定し、手すりとして使用する。手すり部分は高さ650mm~2600mmの範囲で上下に動くように設置した。手すり直径は平成12年度の計測結果より、持ちやすい35mmとした。
〔計測装置の概要〕
■計測条件
1) 施設等の室内を想定しているため、計測は靴を脱いだ状態で行う。
2) 750mmの高さの手すりに対する評価を行う。(「長寿社会対応住宅設計マニュアル」では750mmの手すりの高さが推奨されている。)
3) ちょうど良い手すりの高さを決める。
・高めで持ちやすい高さ
・低めで持ちやすい高さ
・ちょうど良い高さ
■計測方法
測定手順
(1) 手すりの高さを750mmに設定する。
(2) 手すりの持ちやすさについて、次の中から感想を選んで答えてもらう。
-2: | 低過ぎる |
-1: | 少し低い |
0: | ちょうど良い |
1: | 少し高い |
2: | 高過ぎる |
(3) 「ちょうどよい手すりの高さ」を正しく求めるために、まず「低めで持ちやすい高さ」,「高めで持ちやすい高さ」を決めてもらい、最後に「ちょうど良い高さ」を調整して決めてもらう。手すりの高さは、床面から手すりの上端までの高さを計測する。
被験者への教示
(1) まず、この高さ(750mm)で手すりを持って歩いてみてください。手すりの高さについてどう思われるか感想をお聞きします。す。
(2) 次に「低めで持ちやすい高さ」「高めで持ちやすい高さ」「ちょうどよい高さ」がどれぐらいか、ご自分で決めていただきます。
■計測結果
計測年:2001年度
計測人数:
年代 | 20~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70~79 | 80~ | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 8 | 9 | 10 | 11 | 31 | 22 | 10 | 101 |
女性 | 10 | 12 | 12 | 16 | 32 | 24 | 6 | 112 |
合計 | 18 | 21 | 22 | 27 | 63 | 46 | 16 | 213 |
結果のまとめ:
- 計測結果(1)より、750mmの高さの手すりに対して、男性は高齢者でもやや低いと感じており、女性は20~50代はやや低いと感じ、60代以上になるとちょうどよいと感じている。
- 計測結果(2)より、全年代を通して780~880mmの範囲がちょうど良い高さとなっている。女性は20~50代は780~810mmの範囲,60代以上は750mm程度の高さの手すりを良いとしている。
- また、「ちょうど良い高さ」と「高めで持ちやすい高さ」は男女共加齢に伴って低くなっているが、「低めで持ちやすい高さ」は年代による差がほとんどなかった。
- 調査結果(3)より、「ちょうど良い高さ」について、肘頭下縁高に対する比率で見ると、男性は肘頭下縁高の80~82%,女性は82~85%程度で、年代による違いはほとんどなかった。
- 調査結果(4)より、「ちょうど良い高さ」について、上前腸骨棘高に対する比率で見ると、男性は上前腸骨棘高の90~93%,女性は91~95%程度で、高齢者の方が若干低い結果となった。
- 調査結果(1)~(4)より、高齢者になると「高めで持ちやすい高さ」から「低め持ちやすい高さ」の幅が若年者に比べて狭くなり、持ちやすい高さの許容幅が小さくなっていることがわかる。実際の高さだけでなく、肘頭下縁高に対する比率,上前腸骨棘高に対する比率の場合でも、同様の結果となった。
計測結果:
(1) 750mmの高さの手すりに対する評価
【縦軸:評価】
2: | 高過ぎる |
1: | 少し高い |
0: | ちょうど良い |
-1: | 少し低い |
-2: | 低過ぎる |
(2) ちょうど良い手すりの高さ(条件別の高さの比較)
【凡例】
-□-:高めで持ちやすい高さ
-○-:ちょうど良い高さ
-△-:低めで持ちやすい高さ
(3) ちょうど良い手すりの高さ(条件別の高さ/肘頭下縁高の比較)
条件別の高さの肘頭下縁高に対する比率を年代別平均値で示す。
肘頭下縁高は自然立位で計測したものである。
【凡例】
-□-:高めで持ちやすい高さ
-○-:ちょうど良い高さ
-△-:低めで持ちやすい高さ
(4) ちょうど良い手すりの高さ(条件別の高さ/上前腸骨棘高の比較)
条件別の高さの上前腸骨棘高に対する比率を年代別平均値で示す。
上前腸骨棘高は自然立位で計測したものである。
【凡例】
-□-:高めで持ちやすい高さ
-○-:ちょうど良い高さ
-△-:低めで持ちやすい高さ
■報告書PDF
2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p 32-34,61-68,210-212,222-229