色弁別の計測
視覚機能
−平成9年度 HQL420人計測−
1.目的
色弁別とは複数の色標間の色差を見分けることを言う。
日常生活では短時間で色の違いが見分けられることが重要であるため、この計測では2秒間で見分けられる色の差を計測した。
また、色の違いの中には無彩色と有彩色の差等もあるが、この計測では基準色の色標と基準色から少しずつ色相や明度、彩度を変えた色標を二つならべ、その違いが分かるかどうかを計測した。
2.計測条件
この計測では、赤、黄、緑、青の4色について、色相、明度、彩度をそれぞれ変化させたとき、どの程度の差になれば短時間見ただけで違いとして認知できるかを、明るさを変えて計測した。
明るさは一般作業場の1000lx、屋内の薄暗い場所の10lxの2種類とし、照明装置には高演色性の蛍光灯を用い、反射光により計測した。
色弁別の計測条件を表に示す。
視距離 視標面照度 呈示時間 呈示カード 矯正条件 近接(拘束なし) 1000 lx 2秒 271枚 生活視力(両眼) 近接(拘束なし) 10 lx 2秒 271枚 生活視力(両眼)
・平成10年度NEDO121人計測では視標面照度 1 lx(補助照明のみの場合)も追加した。
3. 計測装置
(1)計測室
計測室は組み立て式暗室(1800mm(W)×1600mm(D)×2000mm(H))で作製した。計測室には暗室内全体照明装置はない。
(2)呈示カード
呈示するカードは赤、黄、緑、青それぞれの色について基準色と比較色を作成し、それらを左右に「基準色−基準色」「比較色−比較色」「基準色−比較色」「比較色−基準色」の組み合わせで配置して作成した。その色および色差は次の通りである。
・背景色:灰色(N=6.5)
・基準色:赤(5R4/12)、黄(5Y7/10)、緑(2.5G4/9)、青(5PB4/10)
・色差:色相は時計回り(赤→橙、黄→黄緑、緑→青、青→紫)
明度は明るくなる方向
彩度はくすんでいく方向
変化量:変化量△E*abは△L*a*b*表色系による色差で、次式による。
△E*ab=〔(△L*) 2+(△a*) 2+(△b*) 2〕 0.5
なお、カードの組み合わせは「基準色−基準色」を各色10組作成したので、トータル271枚となる。
色 要素 変化量(△E*ab) 赤 色相 4,8,12,16,20,24 赤 明度 2, 4, 6, 8, 10, 12 赤 彩度 5,10,15,20,25,30 黄 色相 2,4,6,8,10,12 黄 明度 2, 4, 6, 8, 10, 12 黄 彩度 6,12,18,24,30,36,42 緑 色相 4.5,9,13.5,18,22.5,27 緑 明度 2, 4, 6, 8, 10, 12, 14 緑 彩度 5,10,15,20,25,30,35 青 色相 2,4,6,8,10,12,14 青 明度 2, 4, 6, 8, 10, 12, 14 青 彩度 5,10,15,20,25,30
(3)カード呈示装置
カード呈示は高演色性の蛍光灯で照度調節を行う環境ボックス内(550mm(W)×550mm(D)×600mm(H))で行った。環境ボックスは上部に照明灯と照度調節用フィルターを取り付けた白色ボックスで前面は開放している。
1000lxの調節は電圧調節により行い、10lxへの調節は2枚のフィルター開口部の重なり方を調節、または、開口度を調節してあるフィルターを装着して行う。
カード提示は色弁別テスト用カードをテーブル中央部の開口部に2秒間自動提示する装置で行った。図に色弁別計測室の配置を示す。
図 色弁別計測室配置図
4.計測方法
(1)測定手順
・1000lxの測定 → 2分間の順応 → 10lxの測定
(2)1000lx色弁別の測定
・被験者に入室、着席してもらい、使用する矯正具を確認する。
・2分間の順応を兼ねて計測内容の教示を行う。(必ず順応時間を取る)
・色弁別カードを50枚、提示装置(1枚の提示時間は2秒)にセットし、1000lxの計測を行う。
・被験者が報告する「同じ」「違う」を記録する。
・このとき「わからない」あるいは判断できずに回答がない場合は違いがわからなかったものとみなし「同じ」と記録する。
・50枚終了したら、50枚まで記録していることを確かめ、次の50枚をセットし計測する。これを最後まで繰り返す。
・終了後、環境照明ボックスにフィルターを取り付け、カード提示面照度を10lxにする。
・カードの取り替えも含めてこの明るさに慣れるよう、2分以上の時間をとる。このとき、被験者が暗室の外に出ないようにする。
・1000lxと同様の方法で10lxを計測する。
(3)終了
・記録漏れがないことを確認して、被験者に終了を通知する。