信号音の聞こえ方と背景音の影響


聴覚特性−平成12年度実験計測−



1.目的


報知音、警報音などの信号音の聞こえ方については、高齢者の場合、高音域の聴力が落ちていることから一般的に用いられている信号音は聞こえにくいとされ、対応策が検討されている。しかし、ピーピーという信号音は聞こえるという高齢者がいることも事実であり、どのような状況で聞こえるのか、聞こえにくいのかについて背景音との関係に着目して予備的な検討を行った。


2.計測装置・計測条件


(1)測定システム


試験用建築空間として用いた明瞭度試験装置を図に示す。

信号音聞き取り試験は、図に示すように試験室中央を受聴位置とし、受聴位置より正面1.5mの位置に設置したスピーカより刺激音を放射し提示した。

背景音は室内前面(被験者に対して)の室両隅に設定した2台の背景音用スピーカより提示した。

刺激音のレベル設定は被験者の耳の位置に相当する位置で設定した。


(2)刺激音


刺激音は、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzの各周波数ごとに、ON時間2秒、OFF時間1秒のサイクルを繰り返して提示した。


(3)背景音の周波数特性


試験室内に放射される背景音周波数特性は、White Noise、Pink Noise、-5dB/octの3種類を用いた。

その周波数特性が、試験室空間の影響を含め、被験者の耳位置で次の図になるように調整した。(図は65dBの場合を示す)


(5)試験条件


試験要因は次の4項目とし、これらの項目について水準を以下のように定めた。

1) 残響時間 1水準

2) 刺激音の周波数 500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzの4水準

3) 刺激音レベル 音なし、30dB、35dB、40dB、45dB、50dB、55dB、60dB、65dB、70dB、75dBの11水準

4) 背景音 White Noise  45dBA、55dBA、65dBAの3水準

Pink Noise  45dBA、55dBA、65dBAの3水準

-5dB/oct   45dBA、55dBA、65dBAの3水準


3.計測方法


(1)測定手順


計測前の準備 → 刺激音の聞こえ方評価の計測


(2)計測前の準備


1) 残響時間をC条件に設定し、被験者別の背景音の順番を確認し、背景音音圧レベルを確認する。

2) 提示する刺激音のレベルに対応するアッテネータの値を確認する。

3) 記入用カテゴリー尺度表を机の上に置く。


(3)刺激音の聞こえ方評価の計測


1) 所定位置に着席した後、試験の説明を行う。

・この試験はいろいろな音が出ているときに出された信号音が聞き取りやすいか聞き取りにくいかを調べるためのものです。

・これからいろいろな音を出しますので、それぞれについて、次の評価のどれに当たるかを判断していただき、記入表の該当位置に印を付けてください。

(カテゴリー尺度)
とてもよく聞こえる
よく聞こえる
聞こえる
ほとんど聞こえない
聞こえない

2) 4種類の刺激音、11種類の刺激音レベルの組み合わせ(44個)それぞれについてON2秒、OFF1秒のサイクルを、被験者の判断終了合図まで繰り返し提示する。

3) 44個の組み合わせの提示はランダムに行う。

4) 1つの背景音での試験が終了したら退室してもらい、次の試験条件を設定する。

5) 記入用カテゴリー尺度表を新しいものと取り替え、次の背景音条件での計測を行う。

6) 以下、同様にして背景音3種類、背景音レベル3種類および背景音なし(合計10種類)の計測を行う。


(4) 評価結果の解析


1) カテゴリー尺度の「とてもよく聞こえる」〜「聞こえない」に便宜的に5〜1を当てはめて数値化し、評価した