作業時に呈示した音声の聞き取り調査


聴覚特性 −平成11年度実験計測−


 

1.被験者数

  高齢者:12人(60代 4人、70代 4人、80代 4人)

  若年者:8人(20代 3人、30代 5人)

 

2.計測内容

  単純な手指作業(押しボタン操作)、複雑な判断作業(音声により「赤あげて、白さげて」等の指示を出した後パソコン画面上に画像を提示し、音声と画像が一致しているかどうかを入力する)を行っている際に呈示した2音節単語の聞き取り状況を計測する。 

3.計測結果

  下の図は作業中に指定した2音節の言葉があったかなかったかについての回答結果を示したものである。図中の「正答」は正しかった割合、「誤答」は間違った割合、「わからない」はわからなかった割合を示す。

押しボタン操作中の音の聞き取り
旗ゲーム中の音の聞き取り

   
単純な手指作業と比較して複雑な判断作業では、高齢者が言葉を聞き取れなかった割合が増加していた。

次に、音声呈示中の押しボタン入力回数と旗あげゲームの平均回答時間を示す。

押しボタン操作
旗ゲーム
  音声呈示があるときは、若年者、高齢者ともに押しボタン入力回数は減少し、旗あげゲーム回答時間は長くなる傾向が見られた。

計測終了後の内観報告では、押しボタン操作の場合は被験者全員が作業中に呈示される音声が聞こえていたと報告していたのに対し、旗あげゲームでは、高齢者12人中10人が、ゲームの音声を聞き取るのに気を取られ、呈示音声に注意を払えなかったと報告しており、上記の結果と合わせ、高齢者にとっては、2つの音声に同時に注意を払うことの困難さを示している。

この計測では被験者の個人差が大きく見られた。押しボタン操作に際し、音声呈示があると音声に気を取られ極端に入力回数の減少した高齢被験者が2名観察された。旗あげゲームに際しては、音声に気を取られゲームの指示音声を聞き逃す高齢被験者が散見された。


下の図は、押しボタン操作時に受付音ありとなしの場合の押しボタン入力回数を比較したものである。

   受付音がない場合は、若年者、高齢者ともに入絵回数が減少している。多数の被験者が、受付音がないと入力しにくいという内観報告をした。