騒音を伴う家庭内作業時の音の聞き取り


聴覚特性 −平成11年度実験計測−


 

1.被験者数

  高齢者:12人(60代 4人、70代 4人、80代 4人)

  若年者:8人(20代 3人、30代 5人)

 

2.計測内容

 1回目の計測 掃除作業、水洗い作業中に音量レベルを段階的に大きくしながら試験音声を提示し、最初に気づいた音の大きさ、音声の指示に対応した動作をしたときの音の大きさを記録する。
2回目の計測 1回目の計測終了後、提示した試験音声を騒音のない状態で確認してもらう。その後、同様の手順で同じ試験音声を用いて計測を行い、最初に気づいた音の大きさ、試験音声に対応した動作をしたときの音の大きさを記録する。

3.計測結果

 計測結果を以下に示す。

 下の図は掃除作業中に聞き取れた試験音レベルを示したものである。図中の1回目、2回目はそれぞれ1回目の計測、2回目の計測での聞き取れた試験音レベルを示している。 

掃除作業中に聞き取れた試験音レベル

             
図に示すように、若年者、高齢者ともに呈示音声に気づいた時の試験音レベルに比べ、音声の内容に対応した動作を行ったときの試験音レベルの方が大きいという結果が得られた。

このことから、内容を理解してもらうためには、聞こえる音のレベルよりも更に音を大きくする必要があるといえる。

また、1回目の計測で聞き取れた試験音レベルに比べ、音声の内容を記憶した後に行った2回目の計測時に聞き取れた試験音レベルは小さいという結果が得られた。

避難勧告や、ガス漏れの警報音など、通常は耳にすることのない音の内容を理解してもらうためには、普段からどのような音や音声が流れるかの情報を提供しておいたり、伝えたい情報部分をより大きく、ゆっくりと理解しやすく呈示するなどの工夫が必要である。



下の図は掃除作業と水洗い作業の1回目の計測での聞き取り結果を比較したものである。図中の正答は提示音声内容を正しく聞き取れたもの、一部正答は内容の一部を聞き取れたもの、誤答は聞き間違いをしたもの、不明は内容が分からないと答えたものを示す。

    騒音の違いによる聞き取り方への影響

  図より、掃除機の場合も水洗いの場合も、若年者に比べ、高齢者の正答率が悪くなっており、高齢者ほど騒音の影響を受けやすいことが分かる。特に、水洗いの場合は、若年者で聞き取れなかった者がいなかったのに対し、高齢者の半数以上が内容を聞き取ることが出来ないという結果が得られた。

高齢者になると、高音領域の聴力が低下してくるために、高周波成分が多い水洗の影響を大きく受けたことが考えられる。

異なった年齢層の同席する場で使用する製品設計のためには、騒音の種類により、高齢者と若年者に与える影響に違いがあることを考慮する必要がある。