(1)熱・水分移動特性について
測定部は、測定対象の布を挟んで、両側を厚さ5mm前後、風速0.5m/秒程度の薄層の空気が流れる構造になっている。 初め二つの空気流の温湿度を同じにしておき、その後一方の空気流をコックによって第3の空気流に切換え、温湿度を瞬時に変更する。 その時点から、二つの空気流に挟まれた布を通して、一方の空気流から他方の空気流に熱及び水分の移動が起り、その様子がグラフで観察できる。
この装置の第一の特長は、着用時の快適性に大きく関係する衣服を通しての熱及び水分の移動に相当する状況を、発汗直後に相当する時点から時間経過と共に逐次観察できる事である。
また、測定対象試料が大きく、空気流量も多いため、測定用センサーによる測定対象の撹乱が少ない事が第二の特長である。
この熱及び水分移動特性測定結果から、着用時の快適性を予測することを目指す。
(2)シャツ・スラックス
快適性に大きく関係する吸湿率及び通気度を考慮して4種類の生地を作成した。
即ち、吸湿率について顕著に値の大きいテンセル(高強度再生セルロース繊維)と標準的な綿及び殆ど吸湿性のないポリエステルを素材として選び、その中で綿について織物組織を調節し、通気度の顕著に少ないものと標準的なものを作成した。 そして、空気流1の湿度を20%から90%に瞬時に切換えた時の出口での温湿度を測定した。
測定結果を示すグラフを見ると、吸湿率の最も大きいテンセルの場合、湿度切換え後しばらくは、出口での湿度上昇が最も低く抑えられており、続いて通気度の大きい綿、通気度の小さい綿と続き、通気度は大きいが吸湿率の殆どないポリエステルは湿度上昇が早かった。切換え後2分を経過すると、通気度の最も小さい綿が明らかに高い湿度となり、通気度が大きく影響する事を示している。 一方、吸湿による吸着熱により吸湿率の大きいテンセルでは顕著な温度上昇が起り、ポリエステルがわずかな上昇、綿はその中間であった。
この結果から、風のある環境ではテンセルが最も快適と予想され、風のない場合には、吸着熱の少ないポリエステルが最も快適と予想される。
シャツ
生地の種類 |
吸湿率
% |
通気度
cc/c㎡ sec |
重量
g/㎡ |
1 |
テンセル 100% |
10.4 |
128 |
167 |
2 |
綿100% 通気度大 |
6.8 |
138 |
128 |
3 |
綿100% 通気度小 |
6.9 |
19 |
116 |
4 |
ポリエステル 100% |
0.7 |
163 |
128 |
2を標準中衣とし、内衣(肌着)を評価する場合は、
標準中衣を着用した。 |
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熱・水分移動特性試験結果
空気流1(出口側)の温湿度変化熱・水分移動特性について
「測定条件」 |
空気流1 |
: |
30℃ 20%→90% |
厚さ 4mm 流量 6 ㍑/分 |
空気流2 |
: |
30℃ 20% |
厚さ 6mm 流量 9 ㍑/分 |
環境温度 |
: |
30℃ |
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(3)肌着
肌着としては、市販品の標準的なものから選択した。
この内、再生セルロース繊維であるキュプラを若干含んだ素材が、綿の3分の1程度の吸湿性を示すが、その他の素材の吸湿性は殆どない。又、編み組織であるため織物に比べて通気度が約3倍の水準にある。
空気流1の出口側温湿度の変化は、吸湿率の高いキュプラを含む素材の湿度上昇が切換え後しばらくに於いて最も低く、その後も通気度の高さを反映して低く保たれた。他の2点には差がなかった。温度上昇はキュプラを含む素材のみが顕著に大きかった。
肌着
生地の種類 |
吸湿率
% |
通気度
cc/c㎡ sec |
重量
g/㎡ |
A |
エステル/キュプラ交編丸編み |
2.6 |
427 |
123 |
B |
エステル丸編み |
0.6 |
358 |
114 |
C |
エステルトリコット |
0.8 |
361 |
73 |
Bを標準内衣とし、中衣(シャツ、スラックス)を評価する場合は、
標準内衣を着用した。 |
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熱・水分移動特性試験結果
空気流1(出口側)の温湿度変化
熱・水分移動特性について
「測定条件」 |
空気流1 |
: |
30℃ 20%→90% |
厚さ 4mm 流量 6 ㍑/分 |
空気流2 |
: |
30℃ 20% |
厚さ 6mm 流量 9 ㍑/分 |
環境温度 |
: |
30℃ |
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