衣服設計支援のための人間感覚データベース
体温調節能の評価方法
■ 湿度の影響について
1.実験方法
1)環境条件 環境条件2種類と着衣条件2種類を組み合わせて、4種類の実験条件を設定した。
●標準測定基準条件 温度: 26℃で1時間―12℃/時間の速度で20℃まで(0.5時間)―10℃/時間の速度で35℃まで(1.5時間) 湿度: 50%一定
●高湿条件 温度: 26℃で1時間―12℃/時間の速度で20℃まで(0.5時間)―10℃/時間の速度で35℃まで(1.5時間) 湿度: 70%一定
2) 実験着衣
肌着に衣服1または衣服2を用い、他は同一とし2組とした。
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3) 被験者
成人女子8名
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4) 測定時刻
午前10時から午後2時までの4時間で統一
5) 測定姿勢
椅座位安静
6) 測定手順
被験者には前日から生活統制を行い、できる限り一定条件で生活させた。実験当日の朝食は、実験開始前までに食パン1枚に水分200ccを摂取させ、その後は一切の摂取を禁じた。被験者は実験着を着用し、直腸温センサーを装着した後、測定開始1時間前に生活環境シミュレーター主室に入室し、椅座位を保った。各種センサー類を装着後、午前10時に測定を開始した。主観的申告は15分毎に、血圧は5分毎に、心拍数は15秒毎に測定した。安静座位のまま午後2時に実験を終了した。
7) 測定項目
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2.実験結果
1. 温冷感申告は、4種いずれの条件でも室温26℃では、「どちらでもない」と申告したが、室温低下に伴ない「涼しい」「寒い」と申告し、室温上昇に伴なって「どちらでもない」、「暖かい」「暑い」と4時間の実験終了まで変化し続けた。
2. 衣服1のエステル/キュプラ交編丸編みでは(図1)、湿度50%と70%の間には差は認められなかったが、衣服2のエステル丸編みでは(図2)、210分から240分にかけて湿度70%の方が50%より「暑い」と申告した。
3.快適感申告は、4種いずれの条件でも室温26℃では、「快適」から「やや快適」と申告したが、室温低下に伴ない「やや不快」と申告し、室温上昇に伴なって170分ころに「やや快適」まで戻ったが、その後再び4時間の実験終了まで「やや不快」から「非常に不快」へ変化し続けた。
4.衣服1では、50%より70%の方が約1「不快」側の申告をした。衣服2でも同様の傾向であったが、50%より70%の方が約1.5より「不快」側の申告をし、両条件間の差は拡大した。
5.湿潤感申告は、4種いずれの条件でも室温26℃では、「どちらともいえない」と申告したが、室温低下に伴ない「やや乾いている」と申告し、室温上昇に伴なって180分ごろに再び「どちらともいえない」まで戻ったが、その後再び4時間の実験終了まで「湿っている」へ変化し続けた。申告は210分から両条件間に差が生じ、50%より70%の方がより「湿っている」側を申告した。
6.3種類の申告は、いずれも衣服2の方が210分から240分にかけて50%と70%の湿度条件間の差が拡大した。これは50%湿度条件での申告が、衣服1では衣服2よりも「暑くて」、「湿って」、「不快」を申告したために両湿度条件間の差が縮小したためである。
7.吸湿率にわずか2%程度の差が生じただけでも、50%湿度条件で発汗を伴なう条件では吸着熱のために「暑くて」、「湿って」、「不快」を申告したことが示された。70%湿度条件では衣服の吸湿率の差が主観的申告には反映し難くなることが示された。
8.皮膚温、皮膚血流量および心拍数には、同様の傾向が観察された。