高齢者対応基盤整備データベース
ベルトコンベア作業(騒音・照明の暗さが作業に与える影響)
■計測内容
生産場面では、環境条件を整えることが重要である。実際の作業現場では、騒音や照明の暗さが作業効率に悪影響を及ぼす場合があると考えられる。この計測では、騒音と照明の暗さに着目し、それらの条件が作業効率や疲労感に与える影響を調べた。
■計測機器
1) 簡易防音室
2) ベルトコンベア
・本体:株式会社オークラ輸送機製
・形式:BMG30H200A
・単相:100V
・最高速度:2.25m/min
3) 組み立て用部材
・ボルト(なべ小ねじ 径4mm,長さ40mm)
・六角ナット(径4mm)
・ワッシャー(内径4mm,外径10mm)
・プラスチック製ビーズ(直径10mm,口径6mm)
4) 完成品搬送用トレー:プラスチック製:80mm(W)×80mm(D)×50mm(H)
5) 騒音計:リオン社製 NL-15
6) アンプ:ローランド製 SRA-5000
7) イコライザー:ローランド製 EQ-231
8) スピーカー:三菱製 DS-1000ZX
9) 背景音提示用PC:シャープ製 Mebius
10) 騒音:ピンクノイズ(提示レベル:70dBA)
11) 照明:松下電工製パルック蛍光灯パルック色(EX-N) 相関色温度 5000K
12) 照度計:ミノルタ製 デジタル照度計T-1
■計測条件
計測条件 | 計測項目 | |
---|---|---|
照度 | 騒音 | |
1000 lx | 騒音なし |
・不良品率 |
騒音70dBA | ||
300 lx | 騒音なし | |
騒音70dBA |
■計測方法
測定手順
(1) 被験者ごとに各条件がランダムな順序となるよう、乱数表により順番を決める。
(2) 騒音として用いる背景音が被験者の耳元の位置で70dBAとなるように騒音計で測定しながら調整する。
(3) 被験者が作業位置に着座した状態で手元に照度計を置き、条件ごとに照度を調整する。
(4)部品の組立方法について説明し、3分間練習を行ってもらう。その際に、作業手順書*を目の前に提示し、完成した部品を見本として被験者の手元に置いておく。
*「作業手順書」
(5)条件ごとに照度・騒音(有・無)を設定する。照度については、計測条件ごとに計測前に3分間の順応を取るようにする。
(6)予め決めた順番に従って各条件で5分間の作業を行ってもらい、不良品の数を数える。それぞれ間に3分間の休憩をとる(照度に対する順応時間を兼ねる)。
(7) 作業後に、作業に対する疲労感,照度・騒音に対する感想,作業継続可能な時間について聴取する。
(8) 条件ごとに、間に3分間の休憩をとる(照度に対する順応時間を兼ねる)。
被験者への教示
(1) この計測では、工場での作業を想定して、部品を組み立ててベルトコンベア上に流していくという作業を行っていただきます。そして、照明が暗い場合や騒音がある場合に、作業効率や疲れ具合にどのような影響があるのかを調べます。
(2) なお、目が明るさや暗さに慣れるためには少し時間がかかりますので、明るさを設定した後、部屋の中で少し待機していただきます。
■計測結果
計測年:2001年度
計測人数:
年代 | 20~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70~79 | 80~ | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 11 | 9 | 10 | 12 | 34 | 27 | 11 | 114 |
女性 | 12 | 12 | 12 | 16 | 32 | 29 | 6 | 119 |
合計 | 23 | 21 | 22 | 28 | 66 | 56 | 17 | 233 |
結果のまとめ:
- 計測結果(1)より、作業速度は、男性は60代以上、女性は50代以上になると遅くなる。
- 計測結果(2)より、女性の場合は70代,80代で不良品率がやや高くなるが、男性については年代による差は見られなかった。
- また、作業速度,不良品率ともに、条件による違いはあまり見られないという結果になった。
- 計測結果(3)より、正確性・作業速度の面では照度や騒音の条件による違いはなかったが、疲労感においては差が生じており、300lxで背景音がある場合に疲労感を強く感じている。
- また、疲労感に対する評価では、高齢者の方が若年者に比べて疲労感を低く申告しており、騒音の有無や照明の暗さ等の条件による影響も少ないという結果になった。これは、高齢者が作業環境に対して不満を言いたがらず、我慢強いという一般的な傾向を反映していると言える。
計測結果:
(1) 作業速度(部品1個当り)
【凡例】
(2) 不良品率
【凡例】
(3) 疲労感
【凡例】
【縦軸:評価】
1:楽
2:やや楽
3:どちらともいえない
4:やや疲れる
5:疲れる
■報告書PDF
2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-34,180-190,219-220,222-229