高齢者対応基盤整備データベース

足元照明の設置間隔

■計測内容

近年、一般家庭でも足元照明が設置されることが多くなってきている。そこで、この計測では夜間に足元照明しかないような暗い場所を歩く場面を想定し、どの程度の間隔で足元照明を設置すれば歩きやすいかを調べた。室内の照明を全て消して足元照明だけで実際に歩いてもらい、歩きやすさや不安感、ふらつきについて評価を聴取した。

 

■計測機器

1) 足元灯
使用電球:3.8V,0.3A
消費電力:0.8W

各条件で照明を配置した場合の床面照度を以下に示す。
10mの歩行路のほぼ中央(4~5m地点)で照度計を用いて測定した。
なお、図中A,B,Cは照明の正面、a,b,cは照明と照明の中間地点での照度である。

2) 手すり
握り直径:28mm
床面からの高さ:770mm

 

■計測条件

計測条件
(足元灯設置間隔)
計測項目 
500mm

•「歩きやすさ」に対する評価
 1.歩きやすい
 2.やや歩きやすい
 3.どちらともいえない
 4.やや歩きにくい
 5.歩きにくい

•「不安感」に対する評価
 1.不安ではない
 2.やや不安
 3.かなり不安
 4.非常に不安

•「ふらつき」に対する評価
 1.ふらつかない
 2.ややふらつく
 3.かなりふらつく
 4.非常にふらつく

1000mm
2000mm
3000mm

(歩行路:幅1m,全長12m, 床面:カーペット敷き,色=グレー)

 

■計測方法

測定手順

(1) 被験者ごとに各条件でランダムに計測できるように、予め計測順序を決める。

(2) 被験者が入室した後、室内の電気を全て消した状態で足元灯を点灯する。

(3) 被験者には暗順応時間として3分間、照明を消した状態で待機してもらう。このとき、足元照明が眼に入らないように後ろ向きで座ってもらう。

(4) 3分経過後、歩行路を往復してもらう。

(5) 「歩きやすさ」,「不安感」,「ふらつき」について聴取する。

 

被験者への教示 

(1) この計測では、夜間に足元照明だけで歩かなくてはならない場合に、どの程度の照明があれば歩きやすいかを調べます。

(2) 電気を消した真っ暗な室内で足元照明だけを点灯して歩いていただきます。通路の向こう側まで行って戻って来て頂きます。手すりが設置してありますので、使って頂いても結構です。

(3) 安全確認のために、一度手すりを使って向こう側まで行って戻ってきてください(明るい状態で)。

(4) 暗さに目を慣らすために3分間、電気を消した状態でお待ちいただいた後、計測に入ります。

 

■計測結果

計測年:2001年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 11 9 10 13 34 27 11 115
女性 12 12 12 16 32 28 6 118
合計 23 21 22 29 66 55 17 233

 

結果のまとめ:

  • 計測結果(1)より、「歩きやすさ」については、高齢者は足元照明の設置間隔が2000mm,3000mmの広い(暗い)場合でも、あまり歩きにくいと申告していなかった。この結果は、一つには、実験用の平坦な短い距離で行った計測であること、この計測を行う前に同様の歩行路を用いて10m自由歩行の計測を行っていること等が影響して、歩きにくさや不安を感じにくかったためと考えられる。実際に暗い路面で歩く場合には、高齢者も照明の設置間隔に不安を感じるのではないかと思われる。
  • また、もう一つの原因として、高齢者が明るさの違いを認識していないということが考えられる。 実際に、明るさの違いが分からないということを自己申告した高齢者もいた。このように、実際の状況とその認識に不一致が生じていることが、歩行時の転倒等の事故が起きる背景要因の一つになっているのではないかと考えられる。
  • 計測結果(2),(3)より、「不安感」、「ふらつき」に関する評価については、男女とも年代による違いはなかった。また、計測時の観察では、若年者・高齢者共、歩く時にややふらついている者がいたにもかかわらず、高齢者の場合には不安や、ふらついたといった感じが申告されていない。高齢者はこのような計測の場合に頑張ってしまい、率直な感想を聞きづらいという傾向があること,また、自分がふらつきながら歩いているということを自覚していないということが推測される。

 

計測結果:

(1) 条件別 歩きやすさに対する評価

【縦軸:評価】
 1:歩きやすい
 2:やや歩きやすい
 3:どちらともいえない
 4:やや歩きにくい
 5:歩きにくい

 

(2) 条件別 不安感に対する評価

【縦軸:評価】
 1:不安ではない
 2:やや不安
 3:かなり不安
 4:非常に不安

 

(3) 条件別 ふらつきに対する評価

【縦軸:評価】
 1:ふらつかない
 2:ややふらつく
 3:かなりふらつく
 4:非常にふらつく

 

■報告書PDF

2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p32-34,69-74

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