高齢者対応基盤整備データベース

見上げ・見下げ動作

■計測内容

高齢者の視線は、若年者のそれに比べてさほど変わらない。しかし、実際には、高齢者は頭上の時刻表や運賃表が見えにくいことがある。これは、視力の問題だけでなく、姿勢変化(腰曲がり)や関節の問題も絡んでくると考えられる。また、生産場面などでは、作業指示書や注意書きが見にくいところにあると、事故が発生する危険性が生じる。この計測は、見やすい範囲を知るために行なう。

(見上げ・見下げ動作のイメージ)

 

■計測機器

見上げ・見下げ装置  竹井機器工業(株)

 

■計測条件

姿勢 条件
座位 楽に上を見たとき
少し努力して上を見たとき
できるだけ努力して上を見たとき
楽に下を見たとき
少し努力して下を見たとき
できるだけ努力して下を見たとき
立位 楽に上を見たとき
少し努力して上を見たとき
できるだけ努力して上を見たとき
楽に下を見たとき
少し努力して下を見たとき
できるだけ努力して下を見たとき

 

■計測方法

計測は、座位→10分間休憩→立位の順に行う。

測定手順

〔片手〕

(1) 椅子の高さを「身体寸法計測」で得た座面高に合わせる。

(2) まっすぐ前をみてもらう。このときの眼のポイントの位置を記録する。

(3) まっすぐ前を決めるのは被験者自身に行ってもらう。この時のポイントの位置が各々の条件が始まるときに見てもらう位置になる。

(4) 「楽に上を見るとき」「少し努力して見上げるとき」「できるだけ努力して見上げるとき」「楽に下を見るとき」「少し努力して下を見るとき」「できるだけ努力して下を見るとき」の6条件の計測を行う。

(5) マーカーを上下に移動させ、条件の位置に来たら被験者に教えてもらう。

例:「楽に上を見るとき」被験者は楽に上をみる。動くマーカーが被験者の見ている位置に到達した時に、被験者が計測員に知らせる。

(6) 各々の条件での計測が終わった後で、一旦まっすぐ前を見た状態に目線を戻してもらう。

〔立位〕

「座位」の(2)以下より、同様に計測を行う。

視線角度の測り方:
この計測で計った視線角度とは、まっすぐに前を見たときの目線と指標を見たときの視線とがなす角度である。

 

被験者への教示 

(1) この計測では、高い位置や低い位置にある看板や時刻表などを見上げるときに、どの程度の高さまで見えるのか、またどの程度の高さがちょうど良い高さなのかを知るための計測をします。

(2) 座った状態と立った状態の2つの姿勢で計測を行います。

 

■計測結果

計測年:2000年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 9 10 10 12 30 27 8 106
女性 13 9 9 15 26 24 3 99
合計 22 19 19 27 56 51 11 205

 

結果のまとめ:

  • 計測結果(1),(2)より、見上げ角度・見下げ角度共に加齢による差はほとんど見られなかった。
  • また、立位に比べて座位では、見上げ角度・見下げ角度共に狭くなる傾向が見られた。
  • 計測結果(1)より、座位〔男性〕の見上げ角度は、20°35°60°、〔女性〕は15°30°55°程度である。座位〔男性〕の見下げ角度は、30°50°70°、〔女性〕は25°45°65°程度である。
  • 計測結果(2)より、立位〔男性〕の見上げ角度は、20°45°70°、〔女性〕は20°40°60°程度である。立位〔男性〕の見下げ角度は、35°55°75°、〔女性〕は30°55°70°程度である。

 

計測結果:

(1) 見上げ・見下げ動作/座位(条件別の平均値)

【凡例】
-△-:できるだけ努力して見たとき
-○-:少し努力して見たとき
-◇-:楽に見たとき

 

(2) 見上げ・見下げ動作/立位(条件別の平均値)

【凡例】
-△-:できるだけ努力して見たとき
-○-:少し努力して見たとき
-◇-:楽に見たとき

 

■報告書PDF

2000年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p27-30,151-159,210-213,217-226

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