高齢者対応基盤整備データベース

純音の擬声語表記

■計測内容

電化製品の説明書や機械操作の説明を受けるときには、「ピーという音がしたら~」「ブーという音がしたら~」というように音をカタカナ表記で表し説明がされることが往々に見られる。「ピー」という擬声語は報知音の表記の仕方として一般に広く使用されているものの、若年者と高齢者では同じ音を同じ擬声語として理解、認識しているかどうかは定かではない。この計測は、高齢者が様々な音の高さや提示長さをどのような擬声語として捉えているのかを知るために行う。

■計測機器

1) 刺激音提示装置

刺激音提示用
ノート型パソコン:
シャープ製 メビウス PC-MJ720R
アンプリファイアー: ローランド製 SRA-2500
スピーカー: 三菱製 DS-1000ZX

 

■計測条件

1) 計測用音源:刺激音音源

周波数: 250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、3000Hz、4000Hz
波形: サイン波(純音)
提示時間: 0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.5秒
提示パターン:

1回刺激音を提示してから、2秒間隔をあけ同じ音を3回提示する。

提示レベル: 55dBA

 

2) 計測条件

計測条件を以下に示す。

刺激音周波数 × 刺激音提示時間
250Hz
  • 0.1秒
  • 0.2秒
  • 0.3秒
  • 0.5秒
500Hz
1000Hz
2000Hz
3000Hz
4000Hz

 

■計測方法

測定手順

(1) パソコン、イコライザ、アンプの電源がそれぞれONになっているかどうかを確認する。

(2) 被験者が簡易防音室に入室する前に刺激音のレベル調整を行う。

(3) 被験者に入室、着席してもらう。耳の位置がスピーカーから1.5mの距離で、身体の正面になるように椅子の位置を調整する。

(4) 被験者ごとにランダムに刺激音を提示するので、計測が始まる前に刺激音を提示する順番を決める。

(5) 全部で24種類の音を被験者ごとにランダムに提示する。

(6) 被験者が記録シートに丸をつけたのを確認した後に、次の音を提示する。

(7)被験者が音を聴き取れなかった場合には同じ音をもう一度提示する。

 

 

被験者への教示

(1) 電化製品のマニュアルを読むときや工場などの機械装置などの説明を受けるときにはよく、「ピーという音がしたら○○してください」とか「ピピピという音がしたら○○してください」などという表現をします。

(2) この計測ではそのような擬声語表記を実際、どのように個々の人が認識しているのかを知るために計測を行います。

(3) スピーカーから音が提示されます。その音に最適な擬声語表現を記録シートから選んで丸をつけてください。

(4) ご自分の思われる擬声語表現がない場合は空欄に思った通りの擬声語表現を記入してださい。

(5) スピーカーから流れる音が聞こえにくい場合はおっしゃってください。

 

■計測結果

計測年:2001年度

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
人数 21 21 20 30 66 55 17 230

 

結果のまとめ:

  • 計測結果(1)に、全世代を通した上位20位までの擬声語表記を割合で表したものを示す。その他には上位20位までに入らない擬声語表記を全て含む。なお、欠損値とは、提示した刺激音が聞こえなかったものである。
  • この結果を見ると、40代以降では全世代を通した上位20位の結果と同様の右下がりのグラフになる。20代、30代では擬声語を選ぶ範囲が広がり、上位20位に入らないその他を選ぶ割合が高い。
  • 計測結果(2)では、全世代を通した上位6位まで(ピッ、ピー、プッ、プー、ポッ、ポー)の擬声語を散布的にプロットしている。例えば、擬声語表記「ピッ」とカテゴライズした時の刺激音周波数をまとめて合計し、おおよそどの辺りで「ピッ」とカテゴライズしているかを表す平均値を出し、同様に刺激音提示時間をまとめて合計し、どの程度の提示時間であれば「ピッ」とカテゴライズするかを表す平均値を求め、グラフ内にプロットする。残り、5つの擬声語表記に関しても同様の処理を行う。
  • この結果を見ると、ピッ、ピー、ポッ、ポーの擬声語表記は80代では比較的内側にプロットされている。つまり、刺激音周波数の高さや提示時間の長さの区別が他の年代に比べてあいまいであるためと思われる。高齢者では特に、提示した刺激音が全部同じように聞こえるという意見が多く見られた。 プッ、プー、ポッ、ポーの擬声語表記はどれも1000Hz以下の刺激音周波数で選ばれている。

 

計測結果:

(1) 全世代の1位~20位を年代別にみたグラフ

  • グラフ内の割合とは
各年代の被験者が選んだ擬声語表記 ×100(%)
各年代の被験者人数×音の数(24種類)
  • 欠損値—被験者が聴き取れなかった刺激音の割合
  • その他—20位に入らなかった擬声語表現(被験者の記述した表現を含む)

 

(2) 擬声語表現の分布

  • 全世代を通した上位6位(ピッ、ピー、プッ、プー、ポッ、ポー)の擬声語表記をプロットしている。
  • 例えば、54種類の刺激音の中で、擬声音表記「ピッ」とカテゴライズしたときの、刺激音周波数をまとめて平均値を出し、同様に刺激音提示時間をまとめて平均値を求めた。
  • ほかの擬声語表記に関しても同様の処理を行った。

 

上記のグラフから得た目安

  提示時間
0.1~0.2秒 0.3~0.5秒
周波数 250~1000Hz プッ
ポッ
プー
ポー
2000~4000Hz ピッ ピー

 

■報告書PDF

2001年度 高齢者対応基盤整備計画研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋 p364-366,393-409

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