高齢者対応基盤整備データベース

作業距離生活視力(反射表示)

■計測内容

作業しやすい距離での生活視力として、近くのものを見ている距離の代表としてキーボードにより入力作業をするときの視距離を計測し、その距離における視力を計測する。

■計測機器

1) 計測室

・計測室には3m生活視力計測と同様の組立式暗室(高さ2m×幅2m×奥行き4m)を使用した。計測中の換気、視標面の照度調節方法等は3m生活視力と同じである。

・この計測では、視線を変化させなくても視標上のランドルト環を見ることができるように、視距離を維持した状態で視標を上下方向に移動できる視標提示装置を使用した。
また、計測は近点もしくは作業しやすい距離を用いて行うため、目と視標との距離を固定した状態で計測する必要がある。そのため、顎台を使用している。なお、遠近両用眼鏡を用いて近距離の文字を読む場合には、一般的には視線を斜め下に落としてみるため、視線が45°下方に向くように後頭部が固定できる椅子を用いた。

2)照度調節
照度調節方法は3m生活視力と同様であるが、視標面照度を確保するために明るい蛍光灯(松下電工製FLR40S・EX相当品)を使用した。  
3)視標

背景色 ランドルト環の印刷濃度(%)
白(N10) 15%
35%
55%
100%
ランドルト環印刷の黒色濃度が異なる4種類の視標(視距離30cm計測用)をオフセット印刷により作成し使用した。ランドルト環の切れ目は上下左右の4方向、計測可能な視力は印刷の制約上、視力値に換算すると0.1~1.5である。

 

■ 計測条件

計測条件を以下に示す。視距離は3mとする。

視表面照度 矯正条件 視標濃度
1000lx 生活視力(両眼) 15%
35%
55%
100%
生活視力(右眼) 100%
生活視力(左眼) 100%
裸眼視力(両眼) 100%
裸眼視力(右眼) 100%
裸眼視力(左眼) 100%
100lx 生活視力(両眼) 15%
35%
55%
100%
10lx 生活視力(両眼) 15%
35%
55%
100%

■計測方法

測定手順

(1) 暗室の外でノート型パソコンを用いてキーボード操作をしてもらい、操作しやすい状態での視距離(角膜~第3指先点)を計測し、「作業しやすい距離」として記録する。(この距離を計測に使用する。)また、角膜~画面までの距離を測定し、記録する。

(2) 使用用具として記録用データシート、近距離視力視標(3種類)、正解表、遮眼子、順応時間計測用ストップウオッチ、スケール(布製巻尺)、顎台を準備する。

(3) 照明装置(少なくとも計測30分前に点灯)を調節し、視標掲示パネル表面照度を1000lxにする。

(4) 使用する矯正具に対応した椅子や顎台を所定位置に配置する。

(5) 1000lxの測定 → 2分間の順応 → 100lxの測定 → 2分間の順応 → 10lxの測定(途中で中断する場合は、2分間の順応後、測定を開始する

(6) 視標は3種類あるので、適宜取り替えながら計測する。

(7) 生活視力の右眼、左眼視力、および裸眼の視力は照度変更の直前に計測する。

例:1000lxの測定 (1) 1000lx生活視力の測定 ・ 被験者の位置、使用矯正具を確認する。
(2) 2分間の順応を兼ねて計測前の教示を行う。
(3) 最初の視標を視標掲示パネルのフックに取り付け、一番前の視標から読んでもらう。
(4) 判定方法(他の計測でも同じ) 視力0.1のランドルト環を一つ示す。
・被験者の回答が正しければ一つ小さいサイズに移る。
・回答を間違えるまで繰り返す。
・読めない、あるいは間違えた場合は同視力レベルのランドルト環を読んでもらう。
・3個以上正解の場合は一回り小さいサイズに移り、同じように繰り返す。
・正解が2個以下の場合は一回り大きなサイズに戻る。
・正解が3個以上得られる視力を、その被験者の視力値とする。
・結果をデータシートに記録する。
・視標を1枚めくり、同様の計測を行う。
(5) 1000lxにおけるその他視力の測定 ・ 生活視力測定後、次の順序でその他視力を測定する。生活視力と同じ矯正条件での右眼視力 → 左眼視力 → 裸眼両眼視力 → 右眼視力 → 左眼視力
(6) 使用する視標は視標濃度100%(以下A視標という)である。
(7) 右眼、左眼視力測定の場合は遮眼子で、それぞれ左眼、右眼を圧迫しないようにふさぐが、 このとき力が入らないように、ふさいだ側の目もあけているように教示する。
(8) 照度変化時の生活視力測定 ・ 1000lx視力測定後、次の順序で照度変化時の生活視力を測定する。生活視力と同じ矯正条件での100lx生活視力 → 10lx生活視力
(9) 2分間順応の後、視力表セットを取り替え、1000lxと同様の手順で、100lxでの計測を行う。ただし、A視標を用いた計測では、両眼の裸眼視力のみを測定し、記録する。
(10) 引き続き2分間順応の後、100lxと同様の手順で10lxでの測定を行い、記録する。

被験者への教示

(1) 昼間見えても夕方は見えないとか、濃い色は見えても薄い色は見えないという感じは誰にでもあります。この測定は、周り の明るさや、見るものの濃さを変えたときにどのように見えるかを調べることを目的にしています。

(2) 測定は見るものの濃さを変えたときの視力を、周りの明るさを変えて測定します。

(3) ほとんどの測定は普段と同じ状態で、つまり眼鏡をかけている方はかけた状態で両目で見ていただきますが、いくつかの測定では、眼鏡を外した状態や、 片目ずつで測定します。なお、コンタクトレンズを付けておられる方は、後ほど改めて、コンタクトレンズを外したときの視力を測定します。

(4) 普段の生活でどの程度ものが見えているかを調べるのが目的ですから、目を細めたり、力を入れて見たりしないよう、普段通りの見方でお願いします。測定には少し時間がかかりますが、よろしくお願いします。

 

■計測結果

計測年: 2000年

計測人数:

年代 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ 合計
男性 10 10 10 12 31 30 8 111
女性 11 9 9 14 27 28 3 101
合計 21 19 19 26 58 58 11 212

結果のまとめ:

  • 作業しやすい距離は、年代が高くなるにつれて短くなる傾向がある。
  • 年代が高くなると読みとれる視標高さ(外径寸法)は大きくなる。
  • 照度が低下するにつれて視標高さは大きくなる。
  • 視標濃度が薄くなると視標高さは大きくなる。
  • 特に高齢者では、低照度、低濃度における視力低下が大きい。
  • 高齢者は若年者に比べて表示サイズを2~3倍にする必要があると思われる。
  • 50代以上での視力低下が明確に見られる。

計測結果:

(1) 作業しやすい距離

(2) 作業しやすい距離での生活視力-年代、視標濃度と視標高さの関係-

 (3) 作業しやすい距離での生活視力―照度と視標高さの関係―

 

 (4) 年齢と作業しやすい距離での生活視力の関係

 

■報告書PDF

2000年度 高齢者対応基盤整備研究開発 第2編データベース整備(動態・視聴覚特性)より抜粋p241-350

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