高齢者のIT利用特性データベース

様々な入力デバイスと操作性

■ タッチパネル入力実験2 タッチパネル操作におけるターゲットの視覚的干渉に関する実験

■計測目的と計測内容

高齢者では、身体機能，認知機能などにおいて加齢の影響による機能低下が考えられ、若年者と同様の入力インターフェイスの使用が適切であるかどうかを明らかにすることを目的として、さまざまな入力デバイスを用いた実験を行った。タッチパネルのような直接入力型デバイスがマウスのような間接入力型デバイスと比較して、高齢者にとって入力操作性の優れたポインティングデバイスであるかを調べることを目的とした。評価指標として、ポインティング時間およびポインティング作業におけるエラー率を測定した。入力作業の困難さの程度（困難度）を変化させる要因として、ターゲットの大きさ、ターゲットへの接近角度、ターゲットの相対位置の3つを取り上げた。ターゲットまでの距離は120（pixels）に固定した。被験者は、若年者（20～29歳）13名、中高年（50～59歳）12名、高齢者（65歳以上）19名の計44名である。

■計測手順

各被験者に対してタッチパネル操作による実験を５回、および同一内容の作業をマウス操作で行う実験を１回実施する。作業内容は次の通りである。画面中央にスタート位置（●）が現れたときスタート位置を利き手人差し指でポイントさせる。すると３×３の格子状のターゲットが画面上に現れるので、その中で太枠で強調されているターゲット（ポイントすべきターゲット）内へ指を移動させ再び人差し指でポイントさせる。このとき、スタート位置をポイントしたときからターゲットをポイントしたときの間の時間（ポインティング作業時間）が計測される。ターゲット形状は全て正方形とする。ターゲットの大きさ、ターゲットへの接近角度、ターゲットの相対的位置の全てを被験者間要因とする。すなわち１回の実験において２×４×９＝７２試行のポイント作業を行わせる。

■計測条件・環境

複数のターゲットが表示されるタッチパネル操作においてポインティング時間に影響を与えると考えられる要因として、以下の３つを取り上げた。

１) ターゲットの大きさ【２類】：30×30、50×50（pixels2）

２) ターゲットへの接近角度【４類】：0、90、180、270（°）

３) ターゲットの相対位置【９類】：３３子中の全ての位置

また、ターゲットまでの距離は120（pixels）に固定した。

装置の使用は以下の通りである。

（１）タッチパネル

タッチパネルはFP2500－T11（デジタル製）を用いた。有効表示寸法は、211.2W×158.4Hmm（分解能1024×1024）で、タッチ方式はアナログ抵抗膜方式を採用している。タッチパネル・インタフェイスとしては、シリアル（RS-232C）とUSB（USB1.0対応，コネクタ形状：Bタイプ）が装備されている。シリアル・インタフェイスにおけるボーレト、データ長、パリティ、ストップビット長は、それぞれ9600bps、8ビット、なし、1ビットである。タッチパネルマウスエミュレータ用のソフトウェアとして、PL-TD1000（ディ・エム・シー製）を用いた。このソフトウェアを用いることによって、タッチパネルによってマウスの動きをエミュレートできる。

（２）タッチパネル実験２用プログラム

１）開発環境

Microsoft Visual C++ ver.6.0 (OS: Microsoft Windows 98 SE)

２）動作環境

Microsoft Windows 95, Windows 98, Windows 98 SE, Windows NT 4.0, Windows 2000において動作確認済み．

３）プログラムの起動

プログラム（touch2.exe）のアイコンをダブルクリックすることにより起動する。

４）実験条件の設定

メニューバー中のメニューから「ウィンドウの位置と大きさ」および「ターゲットの条件」を設定することが可能である

■計測結果

ターゲット提示位置とポインティング時間の関係については、視覚的干渉によって生じるポインティングの遅延時間をパフォーマンスモデルを利用して補正すると、ポインティング時間の遅延は上の段に行くほど、また右側であるほど長くなると考えられる。ターゲット提示位置とエラー率の関係については、エラー率はターゲット提示位置でほとんど差が見られなかった。入力のしやすさと上半身への負担については、アンケートの結果、タッチパネル入力実験１と２のいずれの項目に関しても、3つの年齢群で有意な差がみられた。高齢者群のほうが入力のしやすさに関する評価が高く、上半身への負担も若年者群より低く感じられていた。

■参考

高齢者のIT利用特性データベース構築等基盤設備整備事業（抜粋：入力デバイスの利用に関する問題点・タッチパネル入力）